山彦よ響け

山とVしかやることがない人の日記

NZ アスパイアリングで沢登り (アラファタ川~ワイパラ川 1~5日目)

1日目(2018年3月5日)

 

砂浜に立てたモノポールツェルトからでも、外が明るくなってきたのがわかる。

山行初日、天候は晴れ。

いいスタートだ。

この海から、遠きアスパイアリングまで歩いていく。

ルートはここNeils Beachから、Arawhata川を遡り、Waipara川に入り、何かの沢から氷河に上がり、コリントッドハットに行きAspiring北西稜を登頂し、ビーヴァンコル経由でMatukituki川に下降、そこからゴムボートを使ってワナカ湖を目指す、という感じだ。

 

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一応ゴールはワナカ湖の湖岸の駐車場

 

たしか12日間くらいの食糧を持っていった。

 

今から行くところにはもちろん記録なんて無いので、今日どれぐらい進めるかわからない。そもそも沢を歩くことが出来るのかもよくわからない。

 

でもまぁ、何とかなるだろう。


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最初はこんな感じの地形のとこが続く

 

ここには少ないと思っていたサンドフライが意外と多く、バグネットを被って準備をする。

雑なパッキングを完了させ、出発をする。


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昨日通った橋まで車道を進み、 川を眺める。水量は減っているようだ。 しかし相変わらずの大河。いつもの沢登りの沢ではない… とはいえここからスタートしなければ始まらない。 地形図を見ると右岸に少しだけ道があるので、 とりあえずそこから歩き始めることにする。


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橋から入渓点を探る


少し進むと道はすぐに終わり、自然と川に降りられた。

そのまま歩けるところまで歩く。f:id:yamabiko222:20211009134444j:image

湿地帯みたいになっている

 

しばらく進むと川が大きく屈曲し、ギリギリ川端が歩けるぐらいになってきた。対岸に渡渉できる雰囲気はない。


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川が屈曲する度に進めるかどうか祈る

 

川の右岸を進むしかなく、 浅い岸側をなんとか進んでいると、藪のなかにテープが見える。 お、これは、と思って上がると、道のようなものが続いている。

これはいい! もしかしたらワイパラ川まで続いているんじゃないか!? なんて話しながらとりあえずここを進み続けることにする。 動物罠があるのを見るに、DOCとかが使っている道なのだろう。


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看板もあった ARはArawhata River?

 

黙々と歩き続け、 適当な支流が入る所で泊まることにする。

空も川も広く、実にニュージーランドらしい景観で最高…! 快適な夜が過ごせる…かと思われたが、 夕方から大量のサンドフライが現れ、 寝ているときも顔の周りを大量に飛び回っていた。


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こんな感じの支流沿いのとこに泊まる

 

2日目(2018年3月6日)

昨日、タープを張るために僕がガルーダヒッチで張ったロープが固く、ほどけないでホサカが難儀している。

O部さんはほどけないようなの張るなよ…!とホサカに怒っている。

ホサカは俺じゃないのに…とは思っているだろうが、ここは怒られたくないので黙っていよう。

 

うん、いつもの光景だ。

今日も頑張ろう。


多少分かりにくくなったが道はまだ続いている。 今日もここを歩くだけで終わるかな、と期待して進み始める。 途中に謎のベースとなる大きなテントとかもあった。

 

テープを頼りに進んでいると、何かおかしい。 ひたすら南に向かうはずなのに、北に向かっている。

戻っている! ?どうやらルートはゆるくラウンドして北に戻っているようだ。

残念だがここで普通に歩ける道は終わり。仕方がないので沢に戻り、沢歩きと藪漕ぎをひたすら続ける。


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これは道を歩いてるんだっけか…?忘れた

 

遠くから見て牛を見つけた。

「お、牛がいますね」と言ったら「 木でしょ」とO部さん。そうか木か…と思って納得し、 しばらく歩いて近づいたら、 それらは一斉に逃げ出した。

やっぱり牛だったじゃないですか。でも、いや、流石ニュージーランド


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牛だった(遠くからなので小さい)


あまり進んでいないことに絶望感を覚えつつ、 適当な藪の中の広い所で幕。天気は良く、 薪も豊富でそれはよかった。


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リバービューアラファタ


3日目(2018年3月7日)

どこかでボート渡渉をしないと進むペースが遅くて本格的にまずくないか、という話もあって渡渉ポイントを探すが、 やはりそのまま流されてしまうんじゃないかというリスクがあるので後回しにしてしまう。

しかしこの日は歩ける浅瀬が多く、思ったよりもペースが出る。 昼過ぎにワイパラ川出合に到着することができた。 この谷、結構遠目から見えていたが、ここまで長かったな…

 


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本流が対岸の方になると広々歩ける。沢登りなの?これ

 

なんか赤いほったて小屋みたいのがあった。牛を飼っている家なのだろうか。実はアラファタ川、たぶんこのあたりまでもボートで入ることができる。らしい…。今の水量では少なすぎて無理では?と思うのだが、季節によるのかな。


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ワイパラ川出合。まだまだ川幅は広い。

 


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赤い小屋。衛星画像からも確認出来る。


ワイパラ川に入っても渡渉は難しく、 そのまま右岸を進み続ける。最初は水量も少なくなり、 瀞場が続いたのでこのまま落ち着いてくれることを期待した。 しかし地形図のゴルジュ地帯に入ると、沢は荒れ狂い、 とても沢沿いを歩ける雰囲気ではなかった。


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流れが緩いところで試しに渡渉しようとする(深かったので止めた)

 


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ゴルジュ地形の所は切り立ってはいないが、沢は荒れている

 

藪漕ぎはそこまで難しいものではなく、 すぐに終わってくれた。

越えた先の適当な支流が流れる砂地で幕とする。

ちなみに竿を振っても全く釣れない。 というか魚影をまだ見たことないぞ…

 


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テン場から。川の色はとてもクリーミー。生物の気配はない。

 

4日目(2018年3月8日)
今日も昨日と同じような風景が続く。

それでもなかなか飽きはしない。

周りの山は険しく、 緑が豊富で川は深い青。コントラストがはっきりした景色はやはり、壮観だ。 この日も天気は快晴で気持ちがいい。

 

「 サンドフライさえいなければ昼寝でもするんだけどな」

「 そうですね~」

なんて話をしていたら、 O部さんは帽子を顔に被せて寝始めた。あ、しないんじゃないんですね。そのまま少し昼寝をして、 遡行再開。

 


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おひるねタイム

 

このあとちょっとO部さんとはぐれたことがあったけど、 今日もつつがなく終わった。 どうやらワイパラ川、ちゃんと沢を歩けているようで進みが早い。

名前のついているラピッド(いわゆる瀬)は巻いたが、 それが最初ラピッドだとは気づかないぐらいだった。警戒していたわりにはたいしたものではなかった。

 


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景色が良い

 


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ここだけグルーミーゴルジュを彷彿とさせる岩質

 

 

5日目(2018年3月9日)

ワイパラ川もこの日の前半までは水量多く、なかなか水流は登れないが、それでもへつったり岸を進んでこれている。


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最後の狭い川幅の地形のところを越えると、結構水量も少なくなってきた。

ここで5日目にして初めて、左岸に渡ることに成功した。


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やっと渡れた!

 

順調に沢を進んでいると、なんと人と出会う。 マジでビックリした。現地のNZ人だ。

どうやらビーヴァンコルからそのまま氷河湖の方へ降りてきて、 ワイパラ川をパックラフトで降るらしい。 もしアスパイアリングに行ってからのルートだったら、 完全にぼくらと逆のルートになる。 どこにも同じようなことを考える人はいるんだなと不思議な気持ちになった。


ビーヴァンコルからの降りかたと地図を貰う。 もしかしたらビッグネルは難しいんじゃないか… という話をしていた所であったので、参考にさせてもらう。
しかし、 人に教えて貰ったルートをそのまま行くのもどうなのか、 ということと、ビーヴァンコルに行ってしまっては、 沢をツメて氷河に出る、 というコンセプトから大きく外れてしまう。

 

ここでO部さんがビナクル(沢)に進もうと言った。 確かにここは下から氷河がもう見える。 さらに沢の方向そのままに進むとコリントッドハット(小屋)、 さらに進むとアスパイアリングという、美しいラインだ。 それにコリントッドハットに近くて楽そう。

 


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稜線につきあげるビナクル(沢)。上部は岩壁になっているように見え、また白飛びしているがうっすら乗っているのは雲ではなく氷河

 


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北西稜を登るので、コリントッドハットへ向かう。赤がビナクル、緑はビッグネル、紫はビーヴァンコルからのルート。画像外の下の方の沢からビーヴァンコルを経由してハットに向かうのは、アスパイアリング登山の通常ルート。(といってもここはヘリ入山が多い気がする)

 

しかし、こちらに進むと氷河湖に行かないことになる…。

僕はワイパラ川のどん詰まりとなる氷河湖、 さらにはそれを取り囲む岩壁群が見たかった。 だがO部さんの案はルートとして美しく魅力的だ…

もう疲れてろくに考えることも出来ない。 とりあえずビナクル出合に泊まることにした。

薪はこの山行中一番豊富で、 かなり大きな焚き火ができた。

 



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ビナクル出合にて幕

 

NZ アスパイアリングで沢登り 「出発まで」

 

始まりはなんだっただろうか。

 
2017年11月、ニュージーランドのワーキングホリデーに来た頃、ホサカからインドネシアの沢に行かない?と連絡がきた。
しかし僕はニュージー来たばっかというのに、車を買ったら残金は20万ちょっと…
お金ないから逆にニュージーに来てよと言った、これが発端か。
 
時は少し過ぎて、インドネシアの話はなくなり、そのままその沢のメンバーだった?
O部、ホサカ、そして自分の3人でニュージーランドの沢に行くことになった。
 
O部さんの発案で、沢登り〜雪稜〜パックラフトを繋げる計画になった。
ルートとしては、南島西海岸から、Arawhata川を登って、Waipara川に入って、どこかのルートからアスパイアリング山に登って、どこからかMatukituki川まで降りて、そこからパックラフトでワナカ湖まで下るという計画だ。
 
なぜこんな計画になったのかは、たぶん、 O部さんがパックラフトが欲しかったからだ。
モ○ベルのチャレンジ支援プログラムに応募して、格安で、あわよくばタダでパックラフトを手に入れようとしたのである。
他にはオーブさんが北極圏だか北欧だかのためにパックラフトと氷河を経験しておきたかったのと、単純に面白そうだったとかがあると思う。
あ、あと成瀬さんのカスケードクリークの報告で写っていたアスパイアリングがカッコよかったから、というのもあったみたい。
 
僕としてはこの計画に二つ返事で了承した。
単純に面白そうだったし、それなりにはラフティングの経験もある。
それにこんな長期になりそうな計画を自分で立てたことはなく、まず自分にはない発想だった。

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3月以降も何の予定もなかった
 
僕の実力では、ニュージーで一人でする沢登りにも限界を感じていたのもある。
日帰り〜一泊程度の距離の沢にしか行けていなかった。

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日帰りでもこの頃は22時頃まで明るいのでめちゃ行動できる
 
アーサーズパス周辺などは、山頂に氷河が広がる山も多く、冬の装備を持ってきていないので難しい。まぁ、持っていたとしても、単独では行っていなかったと思う…
 

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アーサーズパスの懐には氷河が広がる
 
O部さんが突貫でチャレンジプログラム用の計画を作り、申請。
しかしその結果は、モ〇ベルの知り合いを経由しての申請にもかかわらず、パックラフト・その他装備を3割引程度のものだった。
 
これじゃ高くて買えない(貧困にあえぐ平均年齢27歳)、ということで支援プログラムをお願いするのは止めることになった
 
ときはまだ12月、パックラフトを買えなくなって、果たしてこの計画は実行されるのか。本当に二人はニュージーランドに来てくれるのか…。
不安だった。
 
少し進んで、1月。
このときの僕は、南島のクロムウェルでフルーツピッキングのバイト(時給1600円)に勤しんでいた。
農園に住み、週6で働き、日曜はワイクリークでeat yourself fitter(25/12a)を4回トライして、昼過ぎに岩に陽が当たりはじめたらクイーンズタウンの街に移動。ピザを食べてからカジノ行く、という生活を1カ月は続けた。(4,5日目ぐらいで登れた。)

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やっと登れた〜
 
クイーンズタウンクロムウェルなどの内陸地では、幹線道路沿いに流れるクルタリバーを除いては、基本的には水量あふれる沢は見ない。
沢登りがしたければ、アスパイアリングやクックなど、サザンアルプス周辺に行かなければならない。
週一の休みでそのあたりに行くのは距離もあって難しく、もっぱらフリークライマーとして日々を過ごしていた。

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南島。高い山は西の方にしかない。クロムウェルから以東はさながら関東平野
 
3月、フルーツピッキングの仕事もなくなり、O部さんとホサカが僕の住む田舎町クロムウェルにやってきた。
 
ボスにまだ少しだけなら農園に泊っていいと言われたので、一泊だけ皆を泊めて、準備等を終わらせることにする。
 

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パッキング
 
ここでやることの一つとして、近くの湖でボートのテストしなければいけない。
ボートは結局、Amazonで1万の二人乗り用ゴムボートを2艇買った。しかもパドル付き。安い!
チャチな割に重さが一個3.4kgもあるが、まぁそこは気合でカバーできるだろう。

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安ゥい!勝ったな
 
ホサカもこのボートを日本でテストをしてこようとは思っていたようだが、1・2月の日本でテストをする気にはなれなかったそうで(それはそう)、今日が初めての進水式である。
 
無事、浮くことはわかった。これはなんとかなる。
しかし今回は軽量化のためにシングルパドルにした。
これが…わかってはいたのだけど…非常に使いにくい!
全然真っすぐ進まない。やはりダブルパドルじゃないと…
急遽ダブルパドルを探そうとしたが、近場に売っているところはなく、またおそらく売っていても値段の関係で買いたくないだろう、とのことで諦めた。
まぁシングルパドルでも方向転換とかはできるし…なんとかなると信じる。
 
ここから車デポ予定のワナカまでは50km、そこから西海岸のニールスビーチまでは190kmある。
タクシーでこの距離は可能なのかどうか怪しい。
そこで現地のワーホリ仲間のイタリア人ルカ(オタク・好きなアニメはゴールデンボーイ)に送ってもらうことになった。
めっちゃありがたい。
 
ワナカでスーパーに寄り、湖の駐車場に車をデポ。
ルカの車で西海岸へ向かう。
 
 
西海岸が近づいてくると大雨が降ってきた。
先行きが不安になる…
遡行予定の川の橋を渡る。
案の定、そこから見える川は濁流となっていた。
それにめっちゃ太い。
それもそうだ。日本で言ったら荒川とか利根川ぐらいの川が海に流れ込むところだ。太いところで川幅は1kmぐらいはある。
鉄橋を支える柱にごうごうと打ちつける流れを見て、果たしてこれは沢登りの対象なのか、という疑問が湧いてこないでもなかった。
 
海岸に着き、送ってくれたルカに別れを告げる。
まだ雨が降っているので、別れが簡素になってしまった。
4ヵ月ぐらい一緒にいたので、これはちょっと寂しかった…

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さらば、ルカ(翌年日本で会った)
 
とりあえず落ち着く、ということも雨で難しいので、とりあえず海岸から川を遡れるのか偵察する。
これは住民の敷地内なのか…?と怪しいところをかき分けて川に出てみたが、流石に大水量だった。
川沿いの藪を進むことはできるだろうが、家がたくさんあるし、元の道に戻れば車道がある。流石にナンセンスなので、とりあえず明日のスタートは車道を歩くことに決めた。
 

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川の脇の森。なぜかもう汚い。
 
さて、ニュージーランドでは車中泊も含め、野宿が禁止されている。見つかったら罰金200ドルが課せられる。しかし海岸だったら大丈夫、という噂を結構聞いていた。
ということで今日の宿はニールスビーチに決まり。
しかしここ、ビーチといってもただの砂浜だ…
沢で寝るかなと思っていたので、水がない。由々しき事態だ。
民家はあるが、どういう理由を言えばいいだろう…野宿禁止だし…
 
結局考えたがいい答えは出ず、もうとりあえずインターホン鳴らして正直に水くださいと頼んだ。
ここは流石に皆いい人、快くプラティパスに水を入れさせてくれた。
 
いつのまにか雨も上がって、 快適な夜だ。
寒いし焚き火でもするか…と無限にある流木で火を熾し、静かな夜は更けていった。
 
明日は、長い山旅の出発だ。
 

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称名川 ザクロ谷(2日目・2021年8月29日)

朝、4時に起床し、もそもそとツェルトの外に出る。この作業だけで腰に痛みが走る。
回復力には自信がある方だが、 どうやら一晩では昨日転んだときの打撲は治らなかったようだ。


この牛の首からすぐに登山道にも出れるので、 ここが普通の沢だったらもう帰っていただろう。でもやっぱり、 ここは一気に抜けてしまいたい。 ザクロをまた今度にはしたくない。


朝食とともにナロンエースを飲み、準備をすませて出発する。
ナロンエースはすごい。飲んですぐに痛みがなくなってきた。 しかし残りはあと一粒…使い所を考えなくては…


出発してすぐに手まり滝が現れる。 まぁ巻くならここしかないよね、と右岸を少し上がると、 トラロープがあった。やけに親切だ。 そのまま尾根に乗る勢いで大きく巻いていくと、 赤テープにぶつかった。これまた親切だ。


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手まり滝


そのまま平らな藪を少し進んで、支流にぶつかる所で右に折れる。 すんなりと本流に降りることができた。
さぁ、またゴルジュが始まる。
ウエットスーツを着て、進んでいく。


何個か?滝を越えると、(元)口なしの釜が現れた。 今ではドバドバと元気に水を吐き出している。
フリーでいく前に、すぐにハンマー投げを試してみることにした。
今回、You Tubeのザクロ谷の動画に触発されて、 ハンマー投げ用の重い鈎を持ってきていた。 これがすごい引っかかりそうな形状をしている…


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鈎。400gでちょっと重い…


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元・口なしの釜


口なしの釜の滝は2段になっているので、 上まで一気にロープを渡そうと投げる。が、 上にはかからず、代わりに一段上の釜の底に引っかかった。 リトライすることも出来ないので、 このままロープを引っ張り進む。
まずはヨッシーさんがいくが、 ハンドアッセンダーを掴んでも水流が強く、 なかなか上がれないみたい。
仕方ない、僕がボルダーで鍛えたムーブで越えるか…! とトライした瞬間、腰に激痛走る…!

わかってはいたが、 ハードムーブには耐えられなかった。我慢すればなんとかなる、 と思っていたが、痛みで一瞬動きが止まってしまう。
ダメそうっす……と戻ろうとすると、 ヨッシーさんがショルダーの土台になりに泳いで来てくれた。 完全に乗るわけにはいかないので、 右足を釜に差してヒールをかけ、 左足でヨッシーさんを軽く蹴って勢いで越えた。


この後はほとんどの滝をヨッシーさんが突破していった。左にハーケン残置、 右にキレイめなリングボルトが2個打たれた滝があったので、 これはアブミで越えた。(F23?24?)


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左岸に真新しいピンが見える


そしてこれもザクロの代名詞、F25が出てきた。
滑りそうないやらしい巻きルートである。
少し高い位置にリングボルトが見えるが、 ちょっと滝の水流沿いに一段上がれば、すぐ届きそうじゃないか、 とヨッシーさんに行ってもらう。
少し滑りそうだが、 取り付きから二歩ほどでリングボルトに届いた。


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F25の本流を一段上がる


ここで友達は三段人間梯子をやっていたけど、 なんでそんなことしたんだろう… 今と違って水流沿いに上がれなかったのかな… それともただやりたかっただけなのかな…なんて思いもしたが、 とりあえず一安心なので、お助け紐をかけて休憩することにした。


青空が広がり、太陽の日差しも届いて快適だ。
休んだ後、ヨッシーさんリードで登ってもらった。 ボサに埋もれてしまっているが、リングボルトの残置が結構ある。 それでも滑りそうないやらしい斜面なので大変そうだ。


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F25の巻き


進みはじわじわだし、ビレイもつらくはないので結構暇だ。

「ひよってるやつ、いる!?いねーよなぁ!」 と見たことのないアニメのモノマネの練習をしながらビレイをしていると、上からコールがかかった。一個荷物を上げてもらい、 ユマーリングで一気にあがる。
確かに傾斜が急になるあたりとか、 リードは大変そうな気がした。
さてここからリード交代してトラバース。 上に逃げすぎたという記録も見たので、 どんな悪いのかと身構える。 ちょっと上がったところの岩の基部のあたりなら易しいんじゃないかと話し合い、まずは少し上がった。 そこからトラバースしようとするルートを見るが、なんか、 踏み跡というか、しっかり歩けそうな感じだった…

3分くらいでトラバースして、ヨッシーさんを呼んだ後、 残置スリングがあったので懸垂して降りた。 このまま灌木を掴んで降りることも出来たと思う。


無事F25も終わり、次はソーメン滝。
ここまで来ると僕にリードをする意欲はほとんどない。
自然とヨッシーさんが登る準備をして、左からアブミを交えて越えていった。


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ソーメン滝


次の小滝は、左がホールドあるけど抜けが悪そうだなぁ、 と見ていると、ヨッシーさんが悪そうな右から越えていった。 絶好調である。


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左からユマールしたので難しさはわからない


進んで出てきたのは、左岸に残置スリングが垂れているのが見えたので、 記録で見たトラバースをして越える滝だろう。 しかし水量の少なさがなせる技か、 水流近くにジャンプして取り付いたら、普通に登ることができた。


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上に残置スリングが見えるが、そこに行くほうが怖そうだった


このままF34までは何も問題ないか、と思われたが、 F34の手前の滝が手こずった。
ヨッシーさんの遠投力によりハンマー投げには成功したが、 そのロープを使っても直撃する水流を越えることができない。 ヨッシーさんのトライが厳しそうだったので自分もトライするが、 スタンスがなくて上がれない。
ここでダメでした〜と泳いで戻っていると、 ロープが足に絡まってしまった。 わたわたとカラビナを外したりして解いていると、 今度はマイクロトラクションがついた環付きを落としてしまった。
どうしよう…そんなに深くはなく、見えてはいるけれど、 僕はコンタクトで水の中で目を開けていられるかわからない… それに潜るのは苦手だ…
ちょろっとトライするがダメで、ヨッシーさんに回収を懇願した。
ライジャケを脱いで、トライする…すると見事! 拾ってきてくれた!流石です!ありがとうございます!
全身頭から浸ったせいか、ガタガタと震えている。すみませんね、 代わりにルート工作しますわ。


いろいろ考えたが、結局は左岸からの、これいけんのか? っていうへつりで突破した。なんとかなるもんだ。


そしてF34。

やっとチョンボ棒が役に立つときがきた。 水に軽く揺られながら、 チョンボ棒につけたヌンチャクを最初のハーケンにクリップする。
そのまま二手アブミの架替えで、 今にも折れそうなひん曲がったリングボルトにアブミをかける。 なるほど確かに、ここから一歩分、残置のブランクがある。
フリーは怖かったので、 少し下がってしまうがなんとかペッカーを打ち込み、 もう一手アブミをかける。 そのまま続く残置に架替えていき突破することができた。


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F34

 

すぐに支点工作をしなければ、と急ぐがいいクラックはない。岩はすぐに割れてしまい、いいリスも見つからない。
2日目に急に顕著になってきたが、ヌメリが多くなり、 そして岩の脆さが目立ってきた。 試しにジャンピングを使えばすぐに穴が開くし、 岩を適当にハンマーで叩けばボロボロと崩れた。


うろうろしていると、ヨッシーさんが「上の木は?」と叫んでいる。 見ると少し高いが支点に良さそうな木で、 なんとかそこにロープをフィックスした。
もうここから僕に出来ることはあまりない。 ヨッシーさんがなんとか全てのアブミを回収できるかどうかを見守るだけ。


ここぞとばかりに行動食を食べる。 柿の種を食べながらユマールするヨッシーさんを見守る 。やはりペッカーのところが少し下がったトラバースになるので、 その前のアブミをどうやって外すのか難儀していた。 セルフの長さを調節したりして、 なんとか届いてアブミを外すことができ、 無事全てを回収して上がってきた。 正直リードより大変そうでした。ありがとうございます。


これで全ての核心らしい滝は終わった…もうヘロヘロだ。しかしザクロはまだ続く。F35以降は、 だいたいヨッシーさんのリードで進む。 もうユマールしかしたくない。腰の痛みは何故かあまり感じない。それより疲れた…


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普段は容易に越えられそうだが、疲れて勢いがない


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穏やかになってもなかなか終わらない


時間がないので急ぎながらも、 滝の前ではロープを用意するだけ用意して、ヨッシーさんのリードを待つ。 そんな感じで進んでいくと、ようやく最後のF40が現れた。


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F40

ここはハンマー投げを多くのパーティが失敗しているところだ。 僕は朝からハンマー投げをすると腰が痛んでできない。 ヨッシーさんに聞くと「疲れてもうできない」ようなので、 試すことなく巻きに切り替えた。 投げる場所も体勢悪そうなとこだしね。


これで最後だと気合を入れ、空荷でリードする。一番悪いな、ってところでは新しそうなリングボルトがあり、無事に越えて灌木まで上がれた。ここで早くしないと日が暮れる、との焦りからか、そのままロープを引いて荷物を上げようとする。 案の定、藪に引っかかって荷物が上がらない。 結局ヨッシーさんに荷物を小突きながら上がってもらったが、 ここは懸垂して荷物持って登り返すべきだった。
時間をかけていると、 ヨッシーさんが上に上がる頃には日が暮れてしまった。 後は巻き降りるだけなのに…なんてことだ…
しかしまぁ、もう最後の滝の上にはいるし、なんとかなるだろう。 ヨッシーさんのヘッデンが見つからないという一幕はあったが( 普通に見つかった)、ヘッデンでもわかる、それっぽい尾根から懸垂なしで本流に降り立った。


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おぉ…日が暮れた…

 

穏やかな川が流れている。ゴルジュは終わったのだ。あとはもう、登山道にぶつかるまでこの河原を歩くだけだ。

少し休んでから進むと、トラロープが見えてきて、無事、登山道に合流した。

長かった…もうヘロヘロだ。

しかしまだまだアドレナリンが出ているのか、高揚感はおさまらない。

お互いの健闘を称え合い、握手を交わした。

本当にお疲れ様でした。

ウェットスーツを脱いで、歩きやすい登山道を進み始める。

 

眼下にまばゆく光る立山の町は、とても綺麗だった。


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立山の町が明るく見える

 

大日平山荘で記念写真をパシャリ。

登山口に着き、桂台ゲートまでの車道は本当に長く感じられた。


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桂台ゲートに戻ってきた

 

不安や焦りはたくさんあったけど、そのぶん無事に終われた安堵はとても大きい。

時間がかかりすぎて、自分たちの沢登りの下手さが身にしみたが、それも含めていい思い出だ。

 

自分たちのできる精一杯で、一つの夢が叶ったことが、ただ、嬉しい。

 

[行動記録]

1日目・5:40桂台ゲート出発〜6:50雑穀谷7:15〜8:45ザクロ谷出合9:20〜11:45 F3〜13:45 F4上〜17:20牛の首

 

2日目・5:40牛の首〜6:25手まり滝高巻き終了〜9:00 F25 9:45〜11:30ソーメン滝〜15:00 F34〜18:15 F40〜19:40登山道〜20:10大日平山荘〜21:50大日岳登山口〜22:50桂台ゲート

 


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2日目は14時間かけて2kmも進んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

称名川 ザクロ谷(1日目・2021年8月28日)

天気予報に一抹の不安を覚えながらも、やる気は漲っている。

22時前に都内で集合し、桂台ゲートに着いたのは3時半だった。

1時間の仮眠をして4時半起床、5時半に準備が完了した。

既に辺りは明るい。

なんだかいい天気になりそうな空模様で、ちゃんと昨日出発してよかったと嬉しくなる。

マイプロのBCAAとピュアカフェイン(北岳バットレス以来人生2度目)とおにぎりを摂取して、出発する。

 

桂台のゲート開錠時間に降りてこれる想定ではないので、ゲート前に車は置いてある。

第二発電所までゆっくり歩いていくが、ゲートが開くのが少し早かったのか、途中でびゅんびゅん車に抜かれた。

 

歩いてしばらくすると、遠目に称名滝とハンノキ滝が見えてくる。ハンノキ滝に水流は見えない。

が、昨日までそれは見えていた。3日前の大雨からまだ水量は減っていないだろうなぁと思っていた。

願わくば、遡行可能であることを祈る。


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称名滝が見えた

 

第二発電所が眼下に入った。ここまでも結構疲れる。

やっと有名な階段登りだ。

見えるところまではそれほど高くなく、あそこまでか?そんなに大変じゃないような、と考えていた。

実際はそこで一呼吸した後まだまだ続いていて、かなり長かった。

なるべく呼吸を乱さないように、ゆっくり上がっていく。



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まだまだ続いていた

 

上がりきったら事務所小屋のようなものがあって、奥に雑穀谷へと抜けるトンネルがあった。

冷気がすごい。汗に濡れた体には、涼しいというより寒いくらいだ。

一休みした後、雨具を着てトンネルに入っていく。

身長が170cmない僕(たとえ遥かに170cmに足りなくてもこれは間違っていないのだ)は、

腰を曲げることもなく歩いて行ける。

ヨッシーさんが先頭を歩いているし、何も怖くない。


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トンネル、目線の高さで

 

コウモリがいるという話なので、たまに手を叩いたり笛を吹いたりして進む。

するとウワッッ!とヨッシーさんが驚いて、その声に僕も驚いた。

どうやらコウモリ、いたらしい。

先頭を交代してトンネル出口に近づくと、結構いた。しかし目にも止まらぬ速さでどっかいってしまうので、そんなに恐怖はなかった。

 

トンネル出口には扉がある。これが開かなかったらどうしよう、なんて不安を一瞬覚えながらも、無事に開いて雑穀谷に飛び出した。


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雑穀谷に出たところ

 

空は青空こそ出ていないが、悪くない感じだ。同じドコモ回線なのに、何故かヨッシーさんの電波だけ入ったので、天気予報を確認する。

予報は変わらず、昼から夕方まで小雨が降るらしい。一応雷注意報もあった。

どうする?と聞いてくるが、今のこの天気で進まないのはありえない。

初日のゴルジュ途中から撤退している記録はあるし、増水如何だけどやばくなったら戻ればいい。

そんなに集水域は広くないし、小雨だったら耐えるだろう。

という、祈りにも似た想定を立て、行くことにした。

小雨程度じゃ、このザクロにかける情熱の火を消せやしない。

 

…とはいえ予報も気になるので、

「Yahooの雨雲レーダー見れます?」

「アプリ入ってないから1時間後までしか見れないや。(アプリ)ダウンロードする」

「(今から?)すませんがお願いします」

ーー数分後

「やっぱりこの電波じゃダウンロードできないや」

 

…ですよね。先を急ぎましょう。

 

 

雑穀谷は開けた沢で、特に問題になるようなところはないが、岩が大きく進みにくい。

なるべく早く動いているつもりでも、ザクロ谷出合に着くには1時間少しかかった。

 

ようやく、一目でそれとわかるゴルジュが見えてきた。

何度も記録を見たザクロ谷に、ようやく入ることが出来る。

天気もやにわに良くなってきて、気持ちを盛り上げてくれる。

不安も混じるが、ウェットスーツを着て、突入だ。


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ザクロ谷出合

 

昔は滝だったF1も、今ははただの段差である。容易に越える。

 

この先にあるのがF2。ここを越えられるかがザクロ谷の分水嶺となる。

少し泳いでゴルジュを曲がると、その姿が見えた。



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F1を越えたところから

 

水量は…少ない!?少ないじゃないっすか!

 

予想に反して、記録で見た中でも、水量は少ない方だった。

ハンノキ滝は関係なかったのか…?

すっかり秋といった水量だ。

これで僕がフリーで越えられないわけがない。

なんのために初段を登れるようになったのだ。

 

右岸にカムをきめて水流から上がり、準備をする。

30mロープを引いて、意気揚々と突っ込んだ。

記録によると滝裏に左のサイドガバがあるらしい。

壁を蹴って、泳ぎ進んで滝裏へ。

 

水流に打たれながら、ホールドをまさぐる。

が、ない!なんもないのですが…これじゃ離陸できない…

ペタペタといろいろ触ってみるが、水流に弾かれて釜の脇に流される。

もう一度水流に戻り、何度か上に手を伸ばしてみたが見つからず、結局ヨッシーさんのもとに戻ってきた。

あれ?おかしいな?一撃でキメるはずだったのですが…

 

そんな寒くないと思っていたが、身体も震えてきた。

ちょっと体温めますと言って意識的に震えまくり、次のトライに備えた。

「それは低体温症はじまってんじゃない?」と言われるが、そんなことはないと思うことにする。

事実少し震えてたら収まってきた。

 

気を取り直して再トライ。

滝裏に近づこうとするも、何かに引っ張られる。

ロープが引っ張られたと思って「引っ張らないでーー」と言ったが、どうやらハンマーが釜に落ちてバンジーコードがビンビンに伸びて、それに引っ張られていた。

手がかりがなんもなかったらフッキングで活路を見出そうと思い、すぐに取れるようにしていたのだった。

このあと2回ぐらい同じことをして、諦めてハンマーは腰にしっかりと固定した。

沢登りはじめて10年以上経つが、未だにハンマーの携行方法がわからないのか、僕は…

 

先程と同じように、滝裏に進む。さっきよりももっと水流に寄ってホールドをまさぐると…サイドガバがあった!

思ったよりも下に!

アンダーかっていうぐらい思ったよりも下だった。

これでなんとかなる。

両足を外傾してのっぺりとしたスタンスに乗せ、右手を遠いガストン気味に突っ張り、離陸できた。

離陸したら左手をちょいアンダー気味?のホールドに伸ばし、足を整えたら右手がガバに届いた。

あとはなんかうまいこと左足を壁に突っ張る体勢にもってきたらもう大丈夫だ。

 

チムニーの体勢になって安定したので、写真を撮ってもらう。


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F2

 

そのまま上がって1段目を越した。

ここのピッチは短く切った方がいいとは言われていたので、1段目の上に立ってビレイしたかったが、顕著なリスがない。先人が打ったと思われるボルトスカーはあるが、ボルトはない。

足元は白波たっていて立てるかわからなく、このリスを探している今も足は軽く突っ張ったままなので、結構辛くなってきた。

どうしようかと動かないでいると、ヨッシーさんが「そのまま上行ける?」というような仕草をした。

もう一段上まではチムニーの幅が少し広く、上がれんのかな…と思ったが、上は岩があって立てそうなので、頑張って上がった。

岩の上に立ち、一休み。白波たってるところも、足を入れると普通に立てた。

 

落ち着いたらハーケンを打てたので、セルフを取ってまずは荷揚げ。いつものように荷物は下の人がロープをちょっと引いたりして引っかからないようにしながら上げるが、水流直撃のところになってしまって荷物が上がらない。フルパワーでも全然上がらん……。

荷揚げで敗退か…?などと思うが、なんとかしなければ。

ロープは二本引いており、うちの一本をヨッシーさんが下でフィックスした(ように見えた)。なるほど、やりたいことはわかった。というか僕もそうしたいと思っていた。上もフィックスして、張ったロープに沿わせてもう一本で荷揚げしようとした。

とりあえずこれで一回あげる。

が、ロープの張りがゆるく、たわんでまたも荷物が水流にかかって上がらなかった。しょうがないのでガルーダでギンギンに張ったら、なんとか荷揚げに成功した。

細かくきらなきゃハマるって本当でしたね…案の定でした。


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F2をフォローで登るヨッシーさん

 

荷物を2個上げて、フィックスしたロープでユマール交じりでヨッシーさんには上がってきてもらった。ここで鯉のぼりになるのを危惧したが、すんなり上がってきてくれてありがたかった。一段目に上がるまではフォローの方が怖い気がする。

かなり時間をくってしまったので、ヨッシーさんがセルフを取ったらすぐ、荷物を背負ってロープ一本引いて3段目を登り始めた。

容易に見えたので重いギア類を全部置いて来てしまったが、ちょっと行き詰まった。右手にきめたいカム・ナッツがなく、下に向かってへへっと笑う。すいやせん、時間かかりますわ。仕方がないのでエイヤとフリーで越した。


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F2の三段目。右に抜ける。

 

F3はヨッシーさんリードから。

右のちょいハングしたクラックに残置があったので、そこを登ることにする。単純なカムエイドかと思ったが、なかなか突破しない。気づけば水しぶきではなく小雨っぽいのが降ってきた。「(何チンタラしてんすか!時間ないんすよ!)」と心の中で思う。時間がないのは僕のせいでもあることは考えないでおく。

何度かテンションで休んだが、選手交代する。

ここはさくっと行ってカムエイドの経験の差を見せつけるかと取り付くが、抜け口が…悪い。。足がなくて体が上がらない。。

「テンションお願いします!」

ヨッシーさんがかけた、クラックに挟まった岩で取った支点で休む。

「悪いっすね!ここ!」

下から見てもわからないのはいつものことですね^^

少し休んで、アブミの最上段に足をかけ、気合で乗り上がるとなんとかなった。


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F3。右の水が流れていないクラックを登る。

 

ここまででかなり時間を使ってしまった。ただ、なんとなく核心は越えた気がする。先を急ぐ。

 

すぐにF4が目に入るが、第一印象は思ったより低いな、だった。

ここはリードしたかったので、何も言わず勝手にリードの準備をして、出発。

 

ホントに落口のすぐ前まで立つことができる。そこからジャンプで落口のチムニーへ。ドボン!と入るつもりだったが、バシャ!と普通に立てた。深いと思ってたのでビックリしてしまった。そのままチムニー登りでさくさく上がり、定番の右ポケットにスカイフックをきめ、セルフを取って休む。

うーんハーケンを打ってる記録が多いが、ちょっと遠く打ちづらい。

念の為届く範囲までスタンスをタワシで磨いて、そのまま登ることにした。

広めのチムニーを突っ張って数歩上がったら、左にちょいガバがあった。それを経由してトップアウト。そんなに大変ではなかった。

昔はここが核心だと思っていて、このために靴をフェルトにするかラバーにするか悩んでいた。

しかし今回、F2もF4もヌメリは感じられない。コンディションによるのかもしれないが、ラバー一択だと感じた。

昔で思うが、そういえばクレハコーチルートはどうなっていたんだろう。頭になかったな。


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F4

 

上がったら左岸に皆がハーケン打ってるだろうなというリスがあり、そこで支点構築。

今回は荷揚げもそれほど大変ではなく、ヨッシーさんもフリーでさくさくと上がってきた。


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F4をフォローで登るヨッシーさん。

 

これでもう、突破できない、ってところはないだろう。後は時間との戦いだ。

カムエイドなど、地味に時間がかかりながらも少しずつ進む。

あ、F5の右岸に打ってあったボルトが一本抜けた。けっこうキレイに見えたので、最近のかな?まぁ少し面倒になるが、なくてもなんとでもなるだろう。

 

大きな滝もなくなり、これぞザクロ谷といったような緑の回廊が見られるようになる。

ザクロに来たという実感が湧いてくる。

これが長年焦がれた景色である…

しかし悲しいかな。僕の感性は慣れによってか、ほとんど死んでいた。

なんか見たことあるようなゴルジュ地形だな、ぐらいにしか思わなかった。

いや、それは昔から何度もこの谷の写真を見ているからだろうか?

それよりも無事F4までは越えられた喜び、時間のなさからくる焦り、しんどいけどちょっと楽しい、といった感情で忙しかった。


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緑の回廊

 

小雨も強くならず、次第に止んできた。増水はしてたかわからないほどだった。本当によかった。増水するかどうかは祈るしかなかった。

 

順調に進んで、牛の首に到着。めちゃめちゃ疲れた。

ヨッシーさんが左岸にトラロープが垂れているのを見つけて、手まり滝近くにはいいテン場がないらしいからここにしよう。と足を止めた。見れば人が二人横になれるぐらいの砂地がある。

いや…ザクロはもっと…なんかいい寝床があるはずだ…もっとサイコーな寝床が…こんな頑張ったんだから…

 

といつものように寝床にこだわり、少し先に探しに行くと、広い砂地を発見した。

良かった、これで快適な夜を過ごせる…

 


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テン場

 

ハーネスを脱ぎ、動きにくくかったウエットを脱ぎ、ツェルトを張るためのロープを対岸に張りに行く。ザクロにあるのにここは流れ穏やかだ。

藪をまとめてフィックスし、戻ろうしたとこで事件発生。

川の石で滑った…!そして骨盤を強打!痛い!!

あいたたたた…と本気でつらい。

ウエットを脱いでいたのが仇になった…

もうあまり動きたくないぐらい痛い…

時間も遅く、先ほどまでの雨で薪も濡れてしまっていたため、今回は焚火なしで寝ることにする。

ツェルト内でバーナーをつけると、アンダーウェアもだいたい乾いた。

 

今回は長期山行でしか食べないアルファ米尾西のチキンライスと五目ご飯を食べた。もしかしたら尾西は初めて?食べたが、すごい美味しかった。びっくり。コンビニで買ったインスタント豚汁も美味しく、科学の力を感じた。

ご飯が終わると紅茶と少量の百年梅酒のお湯割りを分け合い、寝ることにする。

が、問題が起きた。

いつも寝袋として使っている、エスケープヴィヴィが見当たらない。

少し探すが、すぐに家に干したままだったことに気づいた…

 

まぁないものは仕方ない。念の為持っていたエマージェンシーブランケットにくるまり、寝ることにした。

今回は冬に使っているウールのタイツを着替えとして持ってきて、上はベースレイヤーに薄手のパッカブルジャケット、ユニクロのウルトラライトダウンレベルのダウンだ。このタイツのおかげか、日中は30度に届く夏日のおかげか、全然寒さを感じずに寝ることができた。

いやしかし、エマージェンシーブランケットはほんとに結露がすごいな…内側が水に浸かったのかというぐらいビショビショだ。

しょうがないからちょっとはだけて寝るけど、それでも寒さは気にならないほどだった。


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当たり前だけどブランケットってマミー型じゃなくて一枚の紙なんだ…

 

相変わらず打った左の骨盤付近は痛く、左側を向いては寝れない。

しかし疲れもあり、初日が無事終わった安心感とともに、グッスリと熟睡した。

 


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今日は8時間かけてザクロ谷を1kmも進んだ

 


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途中にあった、人がすっぽり入るほどのラブリーなポットホール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

称名川 ザクロ谷(出発まで)

ビビってました。

ビビリすぎたかもしれません。

 

ザクロ谷に行ってきた。

 

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大学生で沢を始めて少ししたとき、この谷を知った。いつか行きたい、そう思ってから10年近く経ち、ようやくといったところだ。

 

2012年の富山大の事故が起きたときは、やっぱり難しい沢は危ないんだなぁと思うとともに、ここは怖い沢だと脳裏に刻み込まれた。

 

2016年には実際に行く計画を立てた。

しかし現地まで行ったものの、天気予報は悪化して、結局観光だけして終わった。

今思えばあのときはなんて準備不足だったんだろう…天気が良くても、絶対に無理だった。

 

そして去年の2020年、ついに3人で突入かと思われたが、またも天候不順で中止となった。

今年こそはと臨んだ2021年、去年のメンバーから一人欠けてしまったものの(パパは大変です)、ヨッシーさんと二人での決行となった。

 

僕のシフト提出の関係で、7月上旬には山行日は8月末と決まった。

7月末にプレをして、次がザクロ。ちょっと準備不足感もあるかもしれないが、ヨッシーさんとは昔から沢に行っている仲だ。連携は大丈夫だろう…

 

プレに選んだのは五十沢中流部ゴルジュ。

結局は日帰りでゴルジュオンリーになったにもかかわらず、時間切れ敗退だった。

普通に難しくて時間がかかりすぎた。

あれ、ザクロ大丈夫なんかなこれ…と思ったが、お互いあまり口に出さないようにした。

 


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五十沢中流部ゴルジュの核心の巻きを終えて

 

8月に入り、ザクロの日が近づいてきた。

今年は長い梅雨のようで、ほとんどずっと雨が降っている。

8月末に行くことにしたのはたまたまだけど、8月はこの月末にしか行けなかったんじゃないかというぐらい天気が悪かった。

 

10日前から、プレッシャーが凄くなってきた。

もうシャアもメガバズーカランチャーを外すレベル。

毎日毎日、称名滝ライブカメラ立山アメダス常願寺川の水位(あんま関係なかった)、

そして天気予報を見て、水量が増えないこと、当日の天気が良くなることを祈っていた。

気象協会の立山称名滝の予報は、数時間でガラリと変わるほどの不安定な状態。

土日が晴れ予報になっても、寝て起きれば変わっている。何も信用はできない。

 

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立山アメダス降水量(出典:気象庁ホームページ

 

今回は土日月と3連休を取ってある。山行日を土日にするか、日月にするか、ギリギリまで粘って決めようと思った。

水曜、まとまった雨が降った。くっきりと現れたハンノキ滝は、木曜になっても消えなかった。

しかし快晴の金曜、ほとんどハンノキ滝は消えた。これで大丈夫、というわけではないとは思うけど、2020年のお盆の記録と同じくらいの増水だろうと想定した。

予報はコロコロ変わり、土曜が昼から小雨か雨が降る予報になった。

これもまた当日には変わるだろうと信じ、金曜夜出発を決めた。

 


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金曜日の称名滝ライブカメラ

 

 

何より土曜夜出発に変更して、天気予報が更に悪化したから行くのをやめた、ということは避けたかった。

もう、このドキドキには耐えられない。

屋久島フリーウェイ (屋久島9日目  4月27日)

 
朝5時過ぎ。車を停め、アプローチ開始。
昨日確認した赤布を辿って歩き始める。 踏まれてそうな跡がたくさんあって、 赤布を見失ったら相当面倒くさいだろう。
4月下旬といえど屋久島は暑く、 大粒の汗を流しながら取り付きまでの登山をこなした。

 

偵察時の入山直後の場所
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ホサカに「(3週前ぐらいになった足指のしもやけは)治った?」 と聞くと、「悪化したわ」と返ってきた。… まぁ安静にしてなかったですもんね。
七五岳を登ったときよりも足指の痛みが強く、 左足はクライミングシューズが履けない様子。 右足クライミングシューズ、 左足は沢靴でフリーウェイに挑むそうだ。


あそこまで行けば取りつきかな?と思う辺りで、 朝6時の島内放送が聞こえてきた。 思ったよりもよく聞こえて驚いた。
ともかく概ね真っ直ぐ直登して取り付きに到着。 ここまでだいたい1時間くらいだ。

 

やっとこクライミング開始。

ホサカも流石に沢靴でフリークライミングのスラブは厳しいので、 難しいピッチは自分がリードをすることになった。
なので順番的に、ホサカのリードで1p目をスタートする。

 

1p目 5.7 フォロー
ボルトが1本というのが気になっていたが、 すぐに藪に入るので問題ない。

 

1p目
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2p 10d リード
早速このマルチルートの核心。2,3ピン目のところで、 これでいくの〜?もっといいとこないかな〜 とモゴモゴしていたら落ちた。普通に難しかった。
とりあえずは無事にムーブ解決して通過できた。

 

3p 10b  リード?フォロー?(覚えてない)
スラブなのでいやらしかった(気がする)

 

4p 5.8 フォロー
藪に突っ込むぞ!

 

5p 10a リード
短いクラックを登るが、 ジャムバチ効きってわけではないので一瞬戸惑った。
短いのでググイと行けばすぐ終わる。テラスが快適。

 

6p 5.9 フォロー
岩欠ける。テンションかける。テンションさがる。

 

6p目 トラバース気味に左上していく
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7p 10c リード 

スラブを登った。記録通り最後の方のボルトは破断しているけれど、結構ピン間は短いのでそれはそこまで気にならない。でも全体的に大変だった気がする。
 
8p 10a  フォロー 

ホサカは垂壁を登った後藪に突っ込んでいった。 こいついつも藪に突っ込んでるな。
まぁつるべの順番的に仕方ないんだけど。
藪のなかでピッチ切っていて、 終了点を見失っていたので探すことに。
少し左の方に行ったら壁があって、ボルトが見えた。
正解はちょっと左上しながら登ってくるんだったんだなぁ。いや、 わからんっすよこれ。

 

8.5p 10mぐらいコンテで移動

 

9p 10a フォロー
キレイなスラブ。よく沢靴でこれ登れるなぁ〜と感心する。
おまけにかなり暑いので手もぬるぬるだ。
スタンス細かかったのでクライミングシューズでも簡単ではなかっ た。

 

9p目のスラブ
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10p 10c リード
このピッチはトポではボルト数がなんと25!
第二の核心ピッチだ。
流石に細かく打たれているので、 適度に間引きながらヌンチャクをかけていけば問題ない。

しかしいい加減スラブ続きで足指が痛くなってきた。
ここは上までスラブが繋がっているが、藪も近い。
ボルトも藪から近かったので、藪を掴んだりしながら終了点へ。
この登り方じゃ10cないかな?まいいんすよ、これまでさんざん藪使ってきたし…

 

ここが終われば困難なところはもうないかな、という感じなので、フォロービレイをしながらゆっくり景色を眺めることができた。
やっぱり海が見えると気持ちいい。たまに吹く風も、 暑さにダレた体に心地いい。
島はいいなぁと改めて感じた。

 

10p目終了点から
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11p 5.7  フォロー
スラブを登ったり、藪を登ったり、 また藪を登ったりしながら終了点へ。
ホサカさん藪好きっすねw(ルート的にしょうがない)


11p目
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12p  5.9 リード
天気が急に怪しくなり、ポツポツと雨が降ってきた。
スラブで雨はヤバいばい(ここ九州要素)、 と急いで抜けようとする。
抜けようとするけどちょっと傾斜が急になるところの乗り越しが怖い。え~こわ~と逡巡しながらも、なんとか立てた。
めちゃ頑張った。

あとは目の前の藪を直上して山頂にいくだけ、と思ったが、 少し距離がありそう。
藪にちょっと入ったところで、短いがピッチを切る。

 

13p 藪 フォロー
「なんでここで切る!?」みたいなことをホサカが言ってきたが、
いや、藪漕いだ後にピッチ切るの大変だし… さっきのピッチだと山頂までは届かなそうだし…と言い訳を述べた。
単純に結構急な藪漕ぎなのでしんどそうっていうのが正直なところだった。

ホサカリードで山頂まで。 今日ほんとに藪漕ぎリードしまくってるなぁ、と微笑ましくなる。

やはり少し距離があり、奮闘しながら山頂へ。

何はともあれ、無事モッチョム岳登頂。
よかったよかった。

 

山頂からは屋久島の集落が一望できる
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しかし思ったよりもかかってしまった。
まぁ雨が本格的に降る前に抜けられたのでよかった。

後は疲れた体を引きずって下山するだけ。

お疲れ様でした。

 

スーパーから見たモッチョム岳
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出発5:10~山頂15:00~登山口17:30

 

〈総評〉
藪が濃い!

 

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下山後、急いでスーパーに移動して夕食を買いに行った。
屋久島最後の晩餐だ…何にしようか…
惣菜コーナーに行くと、半額のそばが目に入った。
そばか…屋久島最後にそばか…と悩んだが、
でも150円か…と気づいたらそばを買っていた。
あと唐揚げも買った。

おいしかった。

モッチョム岳登山口の駐車場で就寝した。

 

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屋久島10日目 最終日


今日は船の出航時間までダラダラするだけ。

13時半と思ったより時間があるので、朝イチに平内海中温泉( こころざし200円)に寄ったりして時間をつぶした。

 

とりあえず汗は流せる
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そして一昨日から行こうと決めていたモスバーガーに開店同時凸。
船の出航時間まで居座るつもりだったが、 思った以上に店内が狭く、人もいない。
それに店員の方も島のおばちゃんたちって感じなので定食屋かな? というようなアットホームな雰囲気だ。
いたたまれなくなってそそくさと退散した。


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あとはドラッグストアに寄ったりしながら、少し早いが港で待つことに。
しばらく待っていると、船が到着。

やはり高速船と比べてでかい。

 

屋久島で食べたヤクデンの惣菜、半額のそば、ほっともっと、モスバーガー
屋久島の魂を感じた。


僕は忘れない。

 

(屋久島)8日目(4月26日)レスト

昨日、宮之浦川〜七五岳東稜の山旅が終わった。
体がバキバキだ。もう一歩も動きたくない。
しかし宿に二泊するお金なんて持っていない。

 

朝10時、ギリギリまで粘ってから宿を後にする。民宿「たけすぎ」、『屋久島の山岳』が置いてあったりといい宿でした。

今日やることは明日の「屋久島フリーウェイ」に向けてのアプローチ場所の確認だ。逆に言えば、それぐらいしかやることはない。


諸事情あってレンタカーを借りるのは12時から。まだまだ時間はある。
とりあえずということで、宿の前の海沿いの公園?で時間を潰すことにした。
公園っていっても野原と(テーブル)ベンチと東屋と、あとトイレがあるだけ。
そういえば宮之浦川初日の空いた時間もここに居たな…何かとここにいるなこの旅行。

 

公園のテーブルベンチから
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本を読んだりして過ごす。
日差しは暑いけれど、潮風が強く肌寒い。気持ちはいいんだけどあんま快適ではないような場所だった。ちょっとの時間ならいいけど、一日はいられないな、これは。

ダラダラしてたら12時になったので、レンタカーを借りに行った。
これで足が出来た。
もうどこまでもいける。
俺たちは何でも出来るぞ…!

 

向かったのは、喫茶「ドルフィン」。

車で2分ほどの場所だった。歩いたら7分もかかるところだ。
ネカフェのようなものがないかなぁ…と思っていたが、屋久島にはそんなものはない。
しかしこの喫茶店は漫画が大量に置いてあるらしい。
飯も食べられるし、今日のメインはここで決まりという感じだ。

 

人ん家かな?というような扉を開け、入店。
奥には花札のゲーム、そして壁に大量の漫画。そのほとんどが古く、ヤニで黄ばんでいる。今どき室内喫煙OKで、旅情を感じさせる古臭さだった。

すごく時間を潰せそうだ。
ホントはせっかくだから観光でもしたいところだけど、屋久島の観光はほとんどが自然遺産だ。どこも見に行きたいとは思わない。山はいいんだよ、今は。

お腹が空いたら料理を注文して、喉が乾いたら飲み物を頼むなどして、だらだらと過ごす。飯も安くて美味しいし、なんか夜まで居れちゃいそうだなぁ。

 

ーーー4時間後
…どうしよう、なんだか疲れてきた。座って漫画を読んでるだけでも疲れは溜まるようだ。
まぁいい加減アプローチの偵察に行かなきゃいけない。
目的地はここから車で40分。ちょっとドライブといこうかしら。

ドルフィンを出て、モッチョム岳方面へ。
道はまっすぐで気持ちがいい。途中、Hotto Mottoがあった。こんなとこにもHotto Mottoが…なんだかすごく弁当が食べたくなってきた。今夜の晩飯はこれがいいなぁ…

記録で見た取り付きの近くまで来て、車を停める。
たぶんここかなぁというところから森に入っていき、数m進んだら赤布が見えた。
藪は濃くないので歩きやすいが、踏み跡はなく分かりづらい。明るいうちに確認しておいてよかった。
赤布が続いていることを確認し、本日の活動は終了。疲れたぜ。5分くらいだったが。

車に戻り、少し走らせると「千尋の滝」はこちらというような看板があった。
そういえば下山はこっちの方だったなと思い、駐車場まで行ってみた。
着くと意外に広い駐車場だった。

すぐ目の前に展望台があるものと思っていたんだけど…歩くなら見に行かなくていいよなぁ、ということを話しながらも、とりあえず地図の看板を確認する。
どうやらここから100m歩くらしい。これならギリ…いける。200mだったら怪しかった。

 

千尋の滝
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サクッと滝を見て車に戻り、ほっともっとへの道を急いだ。

 

明日はフリーウェイ、朝は早い。

ほっともっとで英気を養い、明日に備えて早めの就寝とした。