NZ アスパイアリングで沢登り (アラファタ川~ワイパラ川 1~5日目)
1日目(2018年3月5日)
砂浜に立てたモノポールツェルトからでも、外が明るくなってきたのがわかる。
山行初日、天候は晴れ。
いいスタートだ。
この海から、遠きアスパイアリングまで歩いていく。
ルートはここNeils Beachから、Arawhata川を遡り、Waipara川に入り、何かの沢から氷河に上がり、コリントッドハットに行きAspiring北西稜を登頂し、ビーヴァンコル経由でMatukituki川に下降、そこからゴムボートを使ってワナカ湖を目指す、という感じだ。
一応ゴールはワナカ湖の湖岸の駐車場
たしか12日間くらいの食糧を持っていった。
今から行くところにはもちろん記録なんて無いので、今日どれぐらい進めるかわからない。そもそも沢を歩くことが出来るのかもよくわからない。
でもまぁ、何とかなるだろう。
最初はこんな感じの地形のとこが続く
ここには少ないと思っていたサンドフライが意外と多く、バグネットを被って準備をする。
雑なパッキングを完了させ、出発をする。
昨日通った橋まで車道を進み、 川を眺める。水量は減っているようだ。 しかし相変わらずの大河。いつもの沢登りの沢ではない… とはいえここからスタートしなければ始まらない。 地形図を見ると右岸に少しだけ道があるので、 とりあえずそこから歩き始めることにする。
橋から入渓点を探る
少し進むと道はすぐに終わり、自然と川に降りられた。
そのまま歩けるところまで歩く。
湿地帯みたいになっている
しばらく進むと川が大きく屈曲し、ギリギリ川端が歩けるぐらいになってきた。対岸に渡渉できる雰囲気はない。
川が屈曲する度に進めるかどうか祈る
川の右岸を進むしかなく、 浅い岸側をなんとか進んでいると、藪のなかにテープが見える。 お、これは、と思って上がると、道のようなものが続いている。
これはいい! もしかしたらワイパラ川まで続いているんじゃないか!? なんて話しながらとりあえずここを進み続けることにする。 動物罠があるのを見るに、DOCとかが使っている道なのだろう。
看板もあった ARはArawhata River?
黙々と歩き続け、 適当な支流が入る所で泊まることにする。
空も川も広く、実にニュージーランドらしい景観で最高…! 快適な夜が過ごせる…かと思われたが、 夕方から大量のサンドフライが現れ、 寝ているときも顔の周りを大量に飛び回っていた。
こんな感じの支流沿いのとこに泊まる
2日目(2018年3月6日)
昨日、タープを張るために僕がガルーダヒッチで張ったロープが固く、ほどけないでホサカが難儀している。
O部さんはほどけないようなの張るなよ…!とホサカに怒っている。
ホサカは俺じゃないのに…とは思っているだろうが、ここは怒られたくないので黙っていよう。
うん、いつもの光景だ。
今日も頑張ろう。
多少分かりにくくなったが道はまだ続いている。 今日もここを歩くだけで終わるかな、と期待して進み始める。 途中に謎のベースとなる大きなテントとかもあった。
テープを頼りに進んでいると、何かおかしい。 ひたすら南に向かうはずなのに、北に向かっている。
戻っている! ?どうやらルートはゆるくラウンドして北に戻っているようだ。
残念だがここで普通に歩ける道は終わり。仕方がないので沢に戻り、沢歩きと藪漕ぎをひたすら続ける。
これは道を歩いてるんだっけか…?忘れた
遠くから見て牛を見つけた。
「お、牛がいますね」と言ったら「 木でしょ」とO部さん。そうか木か…と思って納得し、 しばらく歩いて近づいたら、 それらは一斉に逃げ出した。
やっぱり牛だったじゃないですか。でも、いや、流石ニュージーランド。
牛だった(遠くからなので小さい)
あまり進んでいないことに絶望感を覚えつつ、 適当な藪の中の広い所で幕。天気は良く、 薪も豊富でそれはよかった。
リバービューアラファタ
3日目(2018年3月7日)
どこかでボート渡渉をしないと進むペースが遅くて本格的にまずくないか、という話もあって渡渉ポイントを探すが、 やはりそのまま流されてしまうんじゃないかというリスクがあるので後回しにしてしまう。
しかしこの日は歩ける浅瀬が多く、思ったよりもペースが出る。 昼過ぎにワイパラ川出合に到着することができた。 この谷、結構遠目から見えていたが、ここまで長かったな…
本流が対岸の方になると広々歩ける。沢登りなの?これ
なんか赤いほったて小屋みたいのがあった。牛を飼っている家なのだろうか。実はアラファタ川、たぶんこのあたりまでもボートで入ることができる。らしい…。今の水量では少なすぎて無理では?と思うのだが、季節によるのかな。
ワイパラ川出合。まだまだ川幅は広い。
赤い小屋。衛星画像からも確認出来る。
ワイパラ川に入っても渡渉は難しく、 そのまま右岸を進み続ける。最初は水量も少なくなり、 瀞場が続いたのでこのまま落ち着いてくれることを期待した。 しかし地形図のゴルジュ地帯に入ると、沢は荒れ狂い、 とても沢沿いを歩ける雰囲気ではなかった。
流れが緩いところで試しに渡渉しようとする(深かったので止めた)
ゴルジュ地形の所は切り立ってはいないが、沢は荒れている
藪漕ぎはそこまで難しいものではなく、 すぐに終わってくれた。
越えた先の適当な支流が流れる砂地で幕とする。
ちなみに竿を振っても全く釣れない。 というか魚影をまだ見たことないぞ…
テン場から。川の色はとてもクリーミー。生物の気配はない。
4日目(2018年3月8日)
今日も昨日と同じような風景が続く。
それでもなかなか飽きはしない。
周りの山は険しく、 緑が豊富で川は深い青。コントラストがはっきりした景色はやはり、壮観だ。 この日も天気は快晴で気持ちがいい。
「 サンドフライさえいなければ昼寝でもするんだけどな」
「 そうですね~」
なんて話をしていたら、 O部さんは帽子を顔に被せて寝始めた。あ、しないんじゃないんですね。そのまま少し昼寝をして、 遡行再開。
おひるねタイム
このあとちょっとO部さんとはぐれたことがあったけど、 今日もつつがなく終わった。 どうやらワイパラ川、ちゃんと沢を歩けているようで進みが早い。
名前のついているラピッド(いわゆる瀬)は巻いたが、 それが最初ラピッドだとは気づかないぐらいだった。警戒していたわりにはたいしたものではなかった。
景色が良い
ここだけグルーミーゴルジュを彷彿とさせる岩質
5日目(2018年3月9日)
ワイパラ川もこの日の前半までは水量多く、なかなか水流は登れないが、それでもへつったり岸を進んでこれている。
最後の狭い川幅の地形のところを越えると、結構水量も少なくなってきた。
ここで5日目にして初めて、左岸に渡ることに成功した。
やっと渡れた!
順調に沢を進んでいると、なんと人と出会う。 マジでビックリした。現地のNZ人だ。
どうやらビーヴァンコルからそのまま氷河湖の方へ降りてきて、 ワイパラ川をパックラフトで降るらしい。 もしアスパイアリングに行ってからのルートだったら、 完全にぼくらと逆のルートになる。 どこにも同じようなことを考える人はいるんだなと不思議な気持ちになった。
ビーヴァンコルからの降りかたと地図を貰う。 もしかしたらビッグネルは難しいんじゃないか… という話をしていた所であったので、参考にさせてもらう。
しかし、 人に教えて貰ったルートをそのまま行くのもどうなのか、 ということと、ビーヴァンコルに行ってしまっては、 沢をツメて氷河に出る、 というコンセプトから大きく外れてしまう。
ここでO部さんがビナクル(沢)に進もうと言った。 確かにここは下から氷河がもう見える。 さらに沢の方向そのままに進むとコリントッドハット(小屋)、 さらに進むとアスパイアリングという、美しいラインだ。 それにコリントッドハットに近くて楽そう。
稜線につきあげるビナクル(沢)。上部は岩壁になっているように見え、また白飛びしているがうっすら乗っているのは雲ではなく氷河
北西稜を登るので、コリントッドハットへ向かう。赤がビナクル、緑はビッグネル、紫はビーヴァンコルからのルート。画像外の下の方の沢からビーヴァンコルを経由してハットに向かうのは、アスパイアリング登山の通常ルート。(といってもここはヘリ入山が多い気がする)
しかし、こちらに進むと氷河湖に行かないことになる…。
僕はワイパラ川のどん詰まりとなる氷河湖、 さらにはそれを取り囲む岩壁群が見たかった。 だがO部さんの案はルートとして美しく魅力的だ…
もう疲れてろくに考えることも出来ない。 とりあえずビナクル出合に泊まることにした。
薪はこの山行中一番豊富で、 かなり大きな焚き火ができた。
ビナクル出合にて幕