寝覚の床ボルダー (2023/7/12)
まだ未確認だけど、岩と雪の上松ボルダー群?特集に記録があるらしい。登られてないっぽいのもあるので登ったラインを記載します。
いつもの日記は下の方に書きます。
5級・一斗缶
(6級ぐらいでもあるかな。)
6級・ゲゲゲの指太郎
(画像中央の細いクラック。ちなみに細クラック終了のテラスからそのまた上のテラスへは簡単に上がれます。)
7級・飛松
(棚に上がってデコボコしたあたりから左上のテラスに行くルート)
5級・太松
(クラック。下地が砂。)
8級・グイグイアゲ松
(6〜7mのクラックボルダー。下地が砂。)
ここから登ってないけど登れそうなの
一斗缶裏。2-3段ありそう。
カンテトラバース課題はそこそこあるけど岩が大きくはない。
本堂に突き上げるクラックもあったが少し高いのと、不敬な気がするのでヤメた。
ディープウォーターソロが出来そう。やるつもりだったけど登れなさそうだったのでヤメた。
裏寝覚に目ぼしい岩はあまりない。このリッジ?のラインが初段ぐらいかな?上部が怖そうだったので触っていない。
先程のよりもっと右のライン。触ってる画像しかなかった…。初段ぐらい?かな。
あとは本庄庵の人が登っている「俺は男だ!!」があるけどビチョビチョだった。
奥にはカムがあれば登れそうな少し高めの岩もあった。
以下、日記
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寝覚の床ボルダーに行ってきた。
ここ2,3年、ボルダーもしてきてグレード感もわかってきたので、なんか記録のないとこ登りたくなってきていた。
2段がほんとに全然登れないので登れるやつを登りたいって気持ちもあるのかな…
近そうなとこになんかないかな〜と思いを巡らせ、そういえば中アの方に沢登りに行ったときに「寝覚の床」って見た気がした。岩がある画像も見た気がするので、"寝覚の床 クライミング"で検索すると「本庄庵」というブログのボルダー記録が出てきた。
どうやらいろんなマイナーボルダースポットを開拓するのが好きな人らしい。
グレードが書いてなかったので、よっしゃ俺が行って記録に纏めてやろう、ということで行くことにした。
早く行きたいけど、一人で行くのに東京から木曽は遠い。そう思っているうちに日々は過ぎていった。
5月になり、ワイドを登りたいと言う友達「ゴックン」と瑞牆に行った。車内でふと「寝覚の床っていうボルダー行きたいんだよね」と話すと、なんと知っているらしかった。沢の現地での転進候補として調べたことがあったらしい。流石ネットに漂う記録を見ている量が違う。
記録のないとこに行くのが好きらしいので、なんと同行者を得ることができた。想定外で嬉しい。これで運転時間も交通費も怖くないぜ!
次にタイミングを合わすことができた7月。2日間の休みを取って、ようやく行くことができた。
1日目はあまり木曽の天気が良くなかったので、瑞牆のアストロドームをトライしに行くことに。小川山に一人500円払うか暑そうな瑞牆に行くか、須玉のビッグまで迷っていた。二人してボーナス出たから小川山行っちゃうか!なんて話していたが、まぁ、ええか…と瑞牆にした。
結局アストロドームは3回トライして終了点手前で落ちて登れず、身体だけはバキバキに疲れさせて終わった。
ここからは木曽に移動して道の駅で寝ることにする。ボーナス出たし晩飯何にする!?と話していたが、結局は諏訪湖のスーパーの3割引300円の弁当にした。
いや、でもアジフライ食べたい気分だったんですよ。
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翌日、今日こそ寝覚の床ボルダー。
昨晩の予報では10時に雨が降るらしいので、気合の5時行動開始とした。
そも岩がすぐ見つかるかわからないので、メトリウスのアディションパッドとシューズだけ持って下見に行く。
寝覚の床に降りると、記録で見た一斗缶ボルダーはすぐに見つかった。
そんなに高さはなく、4 手ぐらいで終わりそうだった。まぁ登れるだろって感じだが、下地が平らな岩なので、落ちたらちょっと足が痛そう。
どうしよっかな〜といろんな角度から見て悩んでいたが、ゴックンは「全然大丈夫でしょう。これぐらいの高さ。自分丈夫ですし。」と言う様でやる気マンマン。先に登ってもらうことにする。
注目の第一登。30cmぐらい浮いて、初手で落ちた。
まぁ…そんなもんか…流石Ⅲ級クライマーは違うぜ。
選手交代。僕も身体の丈夫さに自信はある。しかししょうもないケガはしたくないので気合のトライ。一撃できた。まぁ流石に大丈夫か。一回登っただけで昨日の疲れがあるのか、体がバキバキなのを感じた。
ゴックンもなんやかんやの末、登れたので移動する。
次は本庄庵で「ゲゲゲの指太郎」となっていた細いクラックだ。まぁ登れそう。これもちょっと高さがあるかなと思ったが、このフィンガーサイズのクラックなら大丈夫だろう。無事に一撃。
まぁまぁちゃんとジャミング出来れば問題ない。
ゴックンも離陸に手こずっていたが、無事完登。
ゲゲゲの指太郎の左にもテラスに上がるラインがある。
棚に上がってから登るため、ちょっと高さがある。
クラックは薄そうだし、ガバホールドのところに立つのはちょっと窮屈そう。怖いからやらなくていいかな、と思っていると、ゴックンが「やらないんですか?やりましょうよ。ボコボコしたあたり踏んですぐですよ。落ちても僕丈夫なんで。」とやる気マンマン。登ってもらうことにする。
まずは棚に立つと、ガバに両手が届いた。「ガバですよ!あとは無理やり体上げたら終わりですわ」と余裕を見せる。
そこからデコボコのスラブに足を置くが…ツルツル滑って全然置けそうにない。「ちょっと…ムーブがわからない」ということで選手交代。とりあえずガバを余裕を持って届くことが測れたのでトライする。
クラックは使えなかったが余裕の一撃。ムーブがわかればゴックンも余裕で登れてた。
奥に移動するとシンハンドっぽいクラックと腕ぐらいのクラックハイボルダーがあった。
とりあえず下地も砂で取りつきやすそうなシンハンドクラック(太松と名づけた)を登って、もう二度とこのエリアに来ないかもしれないので、腕ぐらいのクラックも登ることにした。
高さがあるが、画像ではわかりにくいが上の方には両足で余裕で立てる棚があるので、実質は2mぐらい。沢で出てきてもまぁノーロープで登るかなってぐらいの岩だ。
登り始める前に下の方で靴を差し込んで見たらちょうど良くフットジャムが決まるサイズだったので、落ちることはないだろうとトライ。
棚に上がって、そのままテラスのガバに届けば良かったけど届かなかったので、ハンドジャム、二歩だけフットジャムしてガバ取って終了。いい感じのフィナーレだ。
ゴックンも続いて完登。練習のためか全部ジャミングで登ろうとしていたが、安全のため最後はガバ持って上がってた。
目ぼしい岩はだいたい登って、体も疲れたので終了の雰囲気。陽も昇ってきて暑くなってきた。
とりあえずまぁ探すだけでも、と裏寝覚に移動する。
裏寝覚は広くなく、良さそうなのは初段ぐらいのラインが引けそうな岩ぐらいか。普通にちょっと被っててホールドも外傾していたのでムズかった。
10時になったが予報は外れて雨が降るのはもっと遅くなるそう。日差しが暑く、疲れもあってヘトヘトだ。
記録のないボルダー登るの楽しいね、と大満足の岩登りだった。
また、は来ないけど…
境川 大畠谷(2022/9/4~5)
朝、5時に起床。
天気予報通りの、晴れ間が広がる穏やかな空だ。沢登りの日にこんなに気持ちのいい朝を迎えたのは、なんだか久しぶりな気がする。昨日は敗退前提に納得して寝たものの、こう穏やかだとなんだか行けるんじゃないかという気になってくる。なんだか増水、していないんじゃないかという気になってくる。
6時に出発。朝でも寒くはなく、少し歩くと暑いくらい。記録ではこの時間に出るパーティは多くなく、皆もっと遅い。たぶん初日はそんなに急がなくても二俣の幕場適地に着けるからというのと、富山は遠いので昨夜の就寝時間が遅くなるためだろう。僕らはこれまでたっぷりと寝てきたし、行動の早さにも不安があるため6時には出たかった。
まずは登山口を進んで橋に行き、川を見下ろす。そんなに増水していないように見える。昨日たくさん降ったんだけどな?奥は水量が多いかもしれないのでまだ心配ではあるが、とりあえず進むことに。橋の手前から踏み跡を辿り川床に降りる。ついにオバタキタン、入渓だ!
登山口の橋から。水は多くないように見える…
ここで既に泳いだ、という記録もあるが、そんな気配は全くない。おそらく桂湖がせき止められ、ここまで水が貯まったらそういうことにもなるのだろう。どういう条件のときになるんだろう?
特に困難な渡渉もなく、平凡な沢を進んでいく。一瞬泳ぎか?と思われたところも腰まで浸かる程度で済んだ。
どうやら増水、ほんの少ししかしていないようだ。絶対増えていると思ったのに…なんでだろう?
※後日、9/3-4で入渓し敗退したパーティの記録を見た。雨が降り始めると、水が濁流と化したらしい。やっぱりここも一気に増えて、一気に減水する沢なんだろう。似たように上流に大スラブを構える早出川ガンガラシバナも、保水しなく一気に水量が増える沢だ。おそらくここも同じような保水力なのだろう。
泳ぎか?と思ったけど腰まで浸かるくらい。増水してないな?
入渓して1時間と少しで2段30m滝。なんだ順調じゃないか…定石通り左岸のしっかりとした踏み跡から巻く。踏み跡なくてもおそらくここだろうとはわかる。
2段30m滝。すごい強い人は登ってる。
巻きあがると遠くに二俣のスラブ、なのかはわからないが、広そうなスラブが見える。あれが二俣だったらそんなに遠くなさそうで嬉しいなぁ。
大スラブか…?
ここまで巻けば充分だろうというところまでトラバースして巻く。もっと奥いくとルンゼいっちゃうし、この辺で降りようと藪を下降していく。沢が見えたあたりがちょっと急になる。たぶん懸垂しないでも降りられそうだけど面倒そうだなぁ~と思っていると、丁度目の前に綺麗な残置スリングがあった。面倒なのでこれを使って20mほど懸垂する。
下から見ると、もっとルンゼの方から降りたら懸垂なしでもいけたかな?少し戻って見てみると2段30mの奥の滝も一緒に巻いていた。
また沢は歩くほどのものになり、進んでいくと滝が続くゴルジュが出てきた。
記録では皆ここは快適に楽しく越えていた。今日はちょっとだけ水量が多いが、果たして…
最初の滝は右岸からシャワーで登っているのをよく見るが、右岸…いけなくない?なんかめっちゃ水強いけど…ちょっとたってるけどボロボロのクラックがある左岸の壁を登るか、と触っていたら、相方は右岸に渡るためにボイルしている深そうなところに入ろうとしている。えっそこ深くない?「止めといたら!」と止める。さっき高巻きでギャーギャー言っていたのに急にやる気だしてくるな…戻ってきたと思ったら、今度は滝に軽く打たれながら滝裏にいこうとする。えっそっち行けんの?大丈夫?と思っていたら、ザバッと出てきた!おお、いけんのか!ナイス!聞くと「記録で書いてあった気がした」とのこと。そうか~普通に見てそのまま滝にもってかれたらヤバそうだから行く気しなかったよ~でも良かった、これでなんなく越えられた。
この下の滝の裏をくぐって右岸から
その後の滝も登れそうなところを登って進む。特に困難なところはない。
天気も良く、シャワーも寒くなくていい感じ。進むと登れない2段CS滝、左岸から巻き始める。ここかな~と思った高さよりちょっと上ぐらいに残置支点があった。ハーケンの他に、ピカピカのリングボルトも打ってある。斜め懸垂はそんなにたくさんはやってないし得意じゃないんだよな~と思いながら降りたが、そこまで斜めに距離を出す必要もなく、簡単だった。
斜め懸垂。そんなに離れていない。
今度は登れそうな滝がかかる。記録で見た、滝裏をくぐって右岸から登るやつだ。こっちはとてもくぐりやすそう!楽しく越える。
次の7m滝は右から登るが、登りだけならこの沢で一番難しかった(とは言ってもⅣくらいだが)。ちょっとヌメッてホールドが丸く、ピンも取れずに空荷で直上する。
この後しっかり水に浸からなければいけない滝を登って、なんかよくシャワーで登ったと書いてある滝に着く。シャワーっていうくらいだから水がドバドバ流れる右岸側から登ったのか…?と思って少し止まってしまったが、水流右でたまに水流にあたるぐらいのところが快適に登れた。
今度はくぐりやすそう!
わりかし順調に進むと2段40m滝に到着。全く登れる気はしないので、右岸に入る支流(ルンゼ?)から巻き始める。ここで急に強い雨が降ってきた、が、これは天気予報通りである。すぐ止むだろうし、高巻きなので暑くなくてちょうどよい。
2段40m滝。支沢から岩壁基部で真横にトラバースした。難しくない。
ルンゼ登って岩の基部あたりでトラバースをしたかったが、相方はこういうトラバースが嫌いなので意見が別れた。このトラバースをするところも下からちらほらツルツルのスラブが見えていたので、それを怖がったのだろう。このままもっとルンゼを登ってから大高巻きに入りたいと主張している。
どう見てもその大高巻きの方が大変そうだし先がどうなっているのかわからないが、2人パーティだと1対1なのでどちらかが妥協・納得しなければいけない。結局、記録では皆この岩の基部のあたりからトラバースしているということで、そちらを強行した。
トラバースに入るが、難しくなかった。スラブっぽくなっているのもしっかりした藪があるあたりのほんの一部だった。下からリッジ状の藪尾根のように見えていたところに来た気がするが、このまま降りたらまだ滝全部越えられていないかな?と思ったので少し登ってからもう少しトラバース。残置スリングを見つけたのでそこから20m懸垂をした。どうやらここも2段40mとその次の滝まで一緒に巻いたようだ。しっかりした木の藪になったところからそのまま降りていれば丁度滝の落ち口だったんだな。
この懸垂も25m以下だし50m一本でよかったんだな…
意外とこの巻きに時間を費やしてしまったが、もう後は二俣まで困難なところはないはず。
疲れてきたが、あとちょっとだと思うと足が早くなる。
しばらく歩くと、二俣にかかる大スラブが顔を覗かせた。進むと大きく広がる大伽藍、オバタキタンの大スラブが眼前に広がった。
飛行機雲がかかって、まだまだ夏って感じ
正直、ガンガラシバナを見たことがあるからか、そんなに感動はしなかった。それよりも早く明日の偵察がしたい。
荷物を置いて、二俣の間のリッジに登ってみる。右俣左岸スラブを見ると、うん、記録で見た通り、傾斜はあまり強くない。というか左俣大滝の方もゆるそうに見えるな…普通に行けるんじゃない!?行かないけど。
右俣左岸スラブは上の方はどこでも登れそうに見えるけど、最初の1P目をどこにするか迷った。ゴルジュの奥にある左岸ルンゼの先の3m滝のところまで登ると、戻ってくるのがちょっと面倒そうなので、ルンゼの手前までで偵察する。右俣左岸ルンゼのさらに左岸(ややこしい)から登れそうだな~と見当をつけ、今日の行動は終了とした。テン場は二俣のすぐ手前の左岸。このテン場の裏から登りだしている人もいるようだ。話し合いの結果、このテン場の裏から登るとトラバースに1p使ってしまうので、ルンゼのところから登ることにする。
右岸の石と左岸のカムを支点にしてロープ、タープを張って落ち着いた。
薪も意外と集まり焚火も起こせた。積もる話もないので、後は晩飯食べて寝るだけだ。
晩飯のメインは軽量化のためカレーメシと簡素なものだが、昨日高山で買った飛騨牛ハンバーグ、飛騨牛サラミ、大のや醸造の味噌、デザートの桃があったので、お腹いっぱいになることができた。
見てすぐにこの景色には飽きてしまったけど、こんな空間を二人占めできるのは心地よい。
予報じゃ明日はもっと天気が良くなるし、楽しみだ。
二俣すぐ手前で幕。もしかして自然落石の危険あった…?
――――2日目
4時起床。昨日、一昨日とたくさん寝ているからか、寝たりないということもなくスッキリと目が覚める。
いつも通りの出発の準備をしていると、大スラブがモルゲンロートに照らされた。これは見たかったやつ。テンションあがる。
6時過ぎに出発する。前日の取り決め通り、ルンゼの辺りからロープを出して登り始める。ホントは乾いたところだけを登りたかったけど、どうやら濡れたところもちょっと登る必要がありそうだ。せっかくスモールカムを何個か持ってきたので、フォローのためにとりあえずクラックに一個いれる。その後ワンポイント濡れたところを登るが、意外とぬめってはいなかった。そのままロープいっぱいルンゼを登り、大きい石を終了点にした。
ゴルジュをちょっと入った登り始めるところ
この大スラブで一番難しかったと言えるのがこの最初の濡れたところだと思う。それでもⅢかよくてⅢ+で、そのあとのルンゼはⅡくらいだ。
2p目、ルンゼから小リッジに上がってそのまま50mいっぱい伸ばしていく。傾斜はゆるく、気をつけていれば落ちないという感じ。Ⅱ~Ⅲだろう。支点を取る必要も感じないので取らずに進む。
傾斜緩いけど浮石多いな~
話には聞いていたが、ホントに浮石が多い。岩が脆くて浮いている、ということではなく、スラブにただ乗っかっている石が多すぎる。大小様々で、どう影響して落ちていくかわからない。可能な限りルンゼの方に落ちないよう、下のゴルジュめがけて投げまくる。これって下どうなっているんだろう?違うパーティいたらたまったもんじゃないだろうな。てか死んじゃうのでは…
ロープが触れただけで落ちそう…
ハーケン2枚で支点を取って、相方を迎える。思ったよりロープ落石はないのでよかった。3p目は相方リード、ゆるそうなリッジを直上するのが楽そうに見えるが、岩が脆そう&浮石がヤバそう(ビレイヤーの僕に直撃しそう)なので巻くように登っていった。結局ランナーはハーケン一枚と、ピッチ終了間際のショボい藪1つ。このピッチで灌木帯に届いた。
青空に向かってロープを伸ばす。落石を落とさないように慎重だ。
4p目、あまり登りすぎてもしょうがないので、トラバース気味に左上してゆく。ここはもう灌木で支点が取れているので絶対安心。トラバースする藪の先がよく見えないので、濃くなる前にとりあえずピッチを切る。
4p目は藪もあるし難しくもない
藪を少し進むと川床に下りている尾根が見えたので、そこまでコンテ気味にトラバースをしていき、藪尾根を下降した。最後の10mくらいがたっていたのでクライムダウンが面倒くさく、立木で懸垂して川床に降り立った。
藪尾根がモサモサと続いているので降りるだけ
これで難所は終わった。もう沢が終わったムードである。
先ほどのゴルジュとは打って変わった、緑あふれる穏やかな渓相で、思わず笑顔がこぼれる。もうずっとこういう沢でいいな…
キレイ~~こういう沢だけでいいよもう
何個か小滝を越えると出てくる、40mナメ滝は少し緊張した。これを越えると30mほどの滝がかかる二俣が出てくる。わざわざこの滝を登りたいとも思えないので、左に進んでいく。
最後の滝。登る必要を感じないので左股へ。
ほどなくして沢型は消え、藪漕ぎとなる。暑い…しっかり濃いので時間がかかる。
途中スッキリと開けたところもあったが、1時間弱かかり登山道へ抜けた。
水を結構がばがば飲んでしまっている。たくさん汲んだつもりだけどかなり減っちゃったな…
まぁ登山道ならすぐに大笠山に行けるだろう、と思っていた。期待は外れ、あまり歩かれていないからか藪が多かった。ギリギリ体を遮らないぐらい。大笠山が近くなってくると、登り返しも大きくなり、登山道は踏み後程度の藪漕ぎの様相を呈してきた。これじゃ沢のツメとなんも変わらない…!
仮払いしてくれ…!
暑くてへとへと、日陰で休みながら、なんとか大笠山山頂手前の分岐に到着した。仮払いをされているかどうかで結構コースタイムが変わる気がする…
荷物を置き、立派な避難小屋を通り過ぎて山頂に立ち寄る。
展望は開けていて気持ちがいい。白山が見えた。白山…初めて見た…!なんだか嬉しい。いつか行ってみたい。
白山となんか名前のついていた壁
分岐に戻り、長い下山に気合を入れる。熱中症が怖いので最初の方はあまり喋らないようにし、体力を温存して歩く。どこかでオバタキタンのあのスラブを登山道から見えないかなとも思ったが、それは最後まで見えなかった。
やっぱり喋っていると気が紛れるので、後半は喋りながら歩く。時間の進みも早い。
あと30分ほどで下山、というところで電波も入っていたので、JAFへ連絡する。1時間ぐらいで来れるならちょうどよいだろうということで…
整備工場などにもいろいろ電話していたら、かなり休憩してしまった。下山が遅くなる…「今ビジターセンターにいるのですか?」と聞かれたが「ちょっと離れたところに…」としか言えなかった。
レッカーが思ったより早く来たらいかん、ということでペースを上げて急ぐ。
最後の急な梯子を下り、入渓点である橋まで戻ってきた。
疲労困憊、ってわけでは全然ないけれど、暑くて結構疲れたな。
お疲れさまでした。
オバタキタンは、特に難しいところはなかったけれど、初日の滝の高巻きや、大スラブの高巻き登攀など、記録がなければもっと難しいところだっただろう。
記録を見るかどうかで沢の難しさはかなり変わってくる。
今回は記録を見て「あまり大変そうじゃない」と思ったところが、「やっぱりそうだった」と確かめることができたのが収穫だ。自分的沢グレードは4級下ぐらいだろうか。
まぁ皆ここ5級の沢って言ってるもんね!コンセプト通りに無事完遂!終わった終わった〜〜
朝焼けで赤く染まるオバタキタン
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まだ暗くはならないけれど、もう夕方だ。登山口に下りてから車までの車道10分、果たして修理はできるのだろうかと今更ながら考える。
車に到着し、レッカーの予定時間まで20分くらいあった。とりあえず濡れタオルで体を拭いて、ギアの整理でもしますか~と片付けを開始する。装備を外して、タオルを持ちトイレで着替えようとしたとき、エンジン音が聞こえてきた。
えっちょっと早くない!?急いで着替えだけして、業者の方に挨拶する。ちょっと怖そうなオジサンだ。とりあえず車の様子を見てくれた。すぐわかる破損はやっぱりオイルエレメントで、それだけでエンジンオイルがこんなに飛び散るかな~?と言っていた。熱心に見てくれていたので、親切な人だと思った。
ここから10kmほどの整備工場に電話しておいたので、そこまで運んでもらう。道中、「もしもエンジンがやられていたらもう廃車だ」「もう時間も遅いので、ホテルや車を置いて帰る方法がある大きな街の整備工場に行った方がいいかもれない」など助言のような脅しのようなことを話される。結局、この幸い軽傷で近場の工場で直った、という可能性を捨てきれなかったので、予定通りに近場に向かった。
時刻はもう19時だ。工場は通常19時閉店で、最初電話したとき、「19時からは予定が…いや、大丈夫です」と何かを諦め作業予約をさせてくれたので、非常にありがたかった。
工場では車をジャッキで上げ、親方の部下のような若い人が車体下部を確認し、何も言わず作業に入った。レッカーの人と作業者の人が何やら話しているが、よく聞こえない位置にいたので何の作業が行われるのかわからない。果たして直るのか…今日中に車を運転して帰れるのか…作業の邪魔をしてはわるいと思ったので、そのまま何も聞かずに待っていた。作業を見た感じ、オイルエレメントを交換し、エンジンオイルを継ぎ足していた。何やら親方も含め3人で話した後、レッカーの人が話しかけてきた。「見た感じ壊れているのはオイルエレメントだけだけど、オイルがエンジン周りに飛び散っていて、洗浄だけで綺麗になるかはわからない。取れなかったオイルは熱で燃える危険性がある」と言って、大きい街、高岡の工場までレッカーすることを強く提案された。え、でもとりあえず壊れてたのはエレメントだけみたいだし…動くんならここから50kmの高岡になんてレッカーで行く必要あるのか…?と思ったので、それは拒否してここまででレッカーの作業は完了にしてもらった。
整備の人はボンネットの中のエンジン周りの洗浄に入った。ここで親方から費用と今やってる作業の説明が入る。どうやら大丈夫そうだ。レッカーの人が言ってたオイルが燃えるということも聞いてみたが、まぁ大丈夫でしょうとのことだった。時間も遅くなっていたので簡単な手書きの費用説明だったが、まぁこんな時間に作業してもらえるだけでありがたい。13500円の費用は高いのか安いのかわからないけど、帰れるんならなんでもいい、という感じでOKした。
かなり丁寧に洗浄をしてもらい、全体の作業は1時間ほどで終了した。
近くの道の駅では遅くまで食堂がやっていることを教えてもらい、感謝を言って後にした。
道の駅の「いわな食堂」でお腹いっぱいご飯を食べ終えたら時間はもう21時前だった。ここはまだ富山で、明日は仕事があることが信じられないが、車が直ったことを信じて帰るのみだ。ホント、なんとか今日中に片が付いてよかった。
今思えば、レッカーの人は高岡の方の業者の人だし、もっと長距離のレッカー作業をしたかっただけかな?と疑ってしまう。それに整備工場の料金も、なんか少し高い気がする…まぁ残業代みたいな感じで多く払いたい気持ちもあったからそっちはまぁいいや。グーグルマップにも星5で口コミもつけておいた。
費用はいくらかかっても気にならない。それほどに今回ここで終わらせられたのが嬉しい。
ありがとうオバタキタン。もう来ないよ。遠いし。
いわな食堂美味しかった!
境川 大畠谷(出発まで)
オバタキタンに行ってきた。
正直、沢はそんなに難しいものではなかった。
人の記録を読むのも自分で見返すのも、気持ちが入っているところが面白い。
だから自分にとってこの沢の記録で大切なのは、当日よりも出発までだ。
オバタキタンに決めた理由、その一つはこの沢のグレードが「5級」だから。
ここが4級上とかだったら全く行く気はしなかった。
二つ目は、記録を見て難しくなさそうと思ったからだった。
正直、沢登りに飽きてきた。どんな壮大な景色を見ても、どこかで見たような気がしてしまう。何より危ないことはしたくない。
ザクロに行けたことがピークだったのだろう。おそらく不動川は行けるけど、滝ノ内や劒沢には怖くて行きたくない。そんなレベルだと自分をわかってしまった。それでいいと思ってしまった。
本当はもう、ニュージーランドの沢登りをしたあたりで、もう終わっていたのかもしれない。あとは心残りを消化するだけだった。
なぜ沢登りを続けているかは、多くの意味で暇つぶし、そしてたまには山に入りたいという気持ちと、ある程度の実力がついたのでそれを使わないともったいない、という貧乏根性だ。
妻も沢登りを続けてきた。どこかを一緒にと目標にしているわけでもなかったけれど、実力もついてきたようだ。ならば一区切りとして、せっかくつけた実力をどこかで使いたいと思った。うむ、貧乏根性だ。
そこはわかりやすい5級がいい。夫婦だけで5級の沢に登ったと、区切りとしては素晴らしいんじゃないかと。だからグレードが大事なのだ。
オバタキタンは、前からふんわりと知っていたが、遠いということもあり詳しくはなかった。しかし近年、知人が何人か行った。あまり準備という準備をしないで行っているのを見て、話も聞き、そんなに大変じゃなさそうだなと思っていた。
有名なオバタキタンの二俣・大スラブ
やはり気になるのはあの大スラブが難しいのかだ。記録を見てみると、ピンが取れないというのが気にかかる。しかし、ヤバかった、や死にそうになった、なんて書いている人はいなかった。注意したとか、そのレベルのことしか書いていない。これはどうだろう。他の5級の沢の記録の多くは、こんな悠長な書き方はされていない。
ほとんど全てのオバタキタンの記録を見たが、このスラブに困難を見出している人はいなかった。
これは…簡単なんじゃないか?そう思うと俄然やる気が出てきた。この沢を目標にすれば、今年も沢のモチベが出てくるだろう。そんなことを8月前は思っていた。
オバタキタンの大スラブは全ピッチを通してもⅢ級は越えないくらいと言われている。落ちるとは思えないが、それでもやっぱり怖かった。
念のためスラブの沢を練習で登ってから、10月頭にオバタキタン、という話になっていた。
しかし記録をたくさん読んでいると、やっぱり難しいようには思えない。練習なんて必要ないんじゃない?という気持ちが強くなってきた。なんとかなるだろ。
9月の頭に4連休を取っていた。少し遅めの夏休みだ。北海道に行こうと言っていたけれど、特に北海道でしたいことがあるわけではない。強いて言えば「あげいも」が食べたかった。それがほぼ全てだった。あと久しぶりにちょっと景色を見たかった。
前から妻は北海道にあまり乗り気ではなく、2週間前になってもやっぱり行く気は湧いてこないようだった。
行きたくないのに行ってもしょうがない。北海道はやめにすることにした。さて何をするか、と考えた。やっぱり沢はあんまり行く気起きないし、行きたいと思えるのは行くと決めたオバタキタンぐらいだ。……もうオバタキタンでいいんじゃないか?そうだよもう行けばいいじゃん!これはいい考えだ。10月頭、ダメだったら次の週、と考えていたけれど、チャンスは多い方がいい。4日間のうち2日天気が良ければいいんだ。これは行けるだろ。
妻は少し準備がしたかったようなので、練習として大源太山αルンゼを一緒に登った。まぁこんなもんだろ、という感じだった。
さて1週間後には連休、という時期になったが、台風が南の海上で発生した。週末の天気が芳しくない。せっかくの休み、無駄にはしたくないと、毎日天気予報の確認に熱が入ってしまう。ちょっと北海道旅行に切り替えるってのもありかなぁと、桂湖と札幌の天気予報をいったりきたりしていた。
台風の影響で予報はコロコロ変わり、結局出発前日まで、まだ北海道旅行の可能性を残したまま決めあぐねていた。
しかしだいたい2日前に出た天気予報は安定してその通りになってきたし、どうやら9月4~5日は天気がもちそうだ。休みは9月2~5日なので、後半2日が勝負。予備日はなくなり、予報が悪化したら何もできないまま休みが終わる…難しい判断だったけれど、やはりここでなんとか終わらせられないか、という気持ちが勝った。
もうやきもきしたくない。モチベーションは行きたい、というよりも終わらせたいという気持ちがほとんどだ。
前半は観光することにして、とりあえず行ってみよう、ということになった。
9月2、3日は高山・金沢を観光しようと考えていたが、思ったよりも平日の疲れがあり、2日は爆睡。もたもたと準備をして、高山に着いたのは22時だった。
3日は高山を観光。
前から行ってみたかった町でもあり、『氷菓』の聖地だったことも思い出して楽しく観光できた。にしてもなんで観光ってこんなに足が疲れるのだろう。山より疲れがたまるんじゃないか、と思う。
ここを流れる宮川の水量は明らかに多く、前日までの雨の影響を強く受けていた。明日の水量が減っていてくれと願わずにはいられない。
高山市街を流れる宮川。普段を知らないが、水量は多く感じる。
夕方まではゲリラ豪雨が降ったりやんだりで、予報によると夜からは晴れるらしい。20時ぐらいまで桂湖から一番近い「くろば温泉」で時間をつぶす。
増水が心配だ。いくつかの敗退の記録を見ると、敗退理由は全て増水だ。その日付までのアメダス降水量データを見てみると、意外にそんな降ってはいなかった。明らかに昨日今日の方が降っている。増水していない、ってことはないだろう…妻がナーバスになってきた。増水では流されるリスクも生まれ、ゴルジュを直登できなかったら延々と高巻きを強いられる。今年は雪渓がどこにも多く残り、オバタキタンもそうなのではないかという懸念もあった。敗退の記録と同じくらい増水していたら、その場で中止にしよう、ということになった。行く前から敗退ムードが漂う。
オバタキタンの前半部分にも土砂くずれの警報が出た。これは敗退か…?
ここで地形図を印刷していないことを思い出した。時間はたっぷりあったのに、すっかり忘れていた。コンビニは高速を20分戻ったところにしかなく、慌てて向かいコピーをする。ついでなのでそこでパッキング。準備をするだけ無駄になるかもしれないが、とりあえず黙々と済ませた。
桂湖に向かう山道、21時半頃、ダメ押しのようにゲリラ豪雨が降ってきた。ただでさえもう無理じゃないかという雰囲気なのに…
早く着いて寝たい、それと桂湖の橋から川をチェックしたい、という思いから、桂湖までの道を急いだ。急いでしまった。この車道をあと5分で駐車場に着くというところ、道の真ん中に大きめの石が落ちていた。カーブを曲がった先だった。綺麗な車道でまさか落石があるとは思わず、急ブレーキも間に合わず、車体の下をすり抜けてくれという願いとともに石を乗り越した。願いもむなしく、ガラガラガン!という大きな音ともに、車体を石に擦りながら通り過ぎた。
やべー…と思って止まると、ボンネットから白い煙がモクモク出てきた。これは焦る。こんな故障しました、みたいな煙が出るなんて…エンジンオイルがぽたぽた垂れていた。とりあえずここに停めていてもしょうがない。幸い車は動くようだったので、もう少し頑張って駐車場、を通り過ぎてとりあえず入渓点近くに停めた。もうよくわからないけどとりあえず車が動くうちに川の様子を見たかった。
数分歩いて橋から川の様子をヘッデンで照らしたが、高さがあってそれほどよく見えない。でもそんなに大増水しているわけではなさそう…でもわからないか。
わからないことがわかったので、とりあえず車を動かしてトイレ近くの駐車場に停める。走るとまたモクモクと煙があがった。
車体の裏を照らしてみると、そんなにダメージを受けているようには見えなかった。一つの小さな筒のようなものだけが潰れていて、ググるとどうやらエンジンオイルフィルター(エレメント)のようだった。オイルパンに穴が空いたわけではないので、垂れていたエンジンオイルはほんの一部のようだった。
とんでもないことになってしまった。これは今回は止めとけというお告げか?
時刻は22時を過ぎている。とりあえず落ち着いて、選択肢を絞るためにJAFに電話をかけた。聞くと1時間ぐらいで誰かは来てもらえるみたい。こんな夜中なのに意外と早く来るんだな…と思うも、とりあえずその情報だけ聞いてまた考えることにした。
いや…とんでもないことになってしまったなぁ。ここでJAFを呼んだら、今回の沢は中止だろう。幸いにしてあと2日も時間がある。帰るのにはなんとでも手段はあるはずだ。しかしここまで遠かった。時間も、お金もかかっている。諦めていいのだろうか。もっと諦める理由がほしかった。
もともと諦めムードではあった。増水していたら中止、ということを話していたし。でも…
とりあえず明日入渓して、どうせ中止になるからその後レッカー呼ぶ、というのが一番納得できるんじゃないかという結論になり、この場でレッカーを呼ばずに明日を迎えることにした。
もし行くことになったら、壊れた車を残置か?家に帰れるのか?考えることは多い。
興奮して眠れないかと思ったが、意外とそんなこともなく、ほどなく眠ってしまっていた。
脱稿と脱渓
コミケ近くなって「脱稿」したという文字をよく見かける。
コトバンクで語源を調べてみると、
*宋・張端義〔貴耳集自序〕~斯(こ)の集の稿を脱するを喜ぶ
とあった。詳しい状況はわからないけど、(書き上げて)原稿から脱することができて嬉しいって感じだ。
創作をする人は自分が望んで描いているのに、脱することができて嬉しいとは変な感じだけど、 概ね合っているんだろうと思う。
山の記録とかも好きで書いているのに、最後の方は終わってくれ~ て感じになるし。
twitterで沢登りで遡行終了して沢から出た、という意味で「脱渓」というのを見るようになった。
沢をやってて、沢の山岳会に入ってても聞いたことのない、馴染みのない言葉だった。なんとなく脱出の「脱」のイメージからか、敗退したときに使う言葉のように思えた。でもこの脱渓も脱稿と同じように、わざわざ自分から進んでやっているのに行為を終えて喜ぶ、という意味では同じだし、これはこれであっているのか、なんて思う。
西表島 仲間川〜仲良川(2022/4/1~4/2)
朝、ゆっくりと目を覚まし、窓から外を見る。小雨が降っており、生憎の空模様。まぁ前日の予報通りだ。にしても風強いな。
雨風がなければ過ごしやすい
満潮の時間、 そしてマリンレジャー金盛の営業開始に出発するため、 集合は宿から10分の船着場に8時と、少しゆっくりだ。
普段着として使っていた水着から沢の服に着替える。 がここでトラブル。 いつも下に履いているドライレイヤータイツがない… いつもはこれを履いて下着は履かないので、下着は持ってきていない… 貴重品と旅行道具と一緒に、 石垣島フェリーターミナルのロッカーに置いてきた。
困った…普段の沢ならいいが、前に西表の沢に行ったとき、 ヘドロのようなものの上を歩くときもあったし、淀みを泳ぐし、 あまり綺麗な沢のイメージがなかった。
そこに肌着もなしはちょっと辛い。あ、着替え用の毛下着はあった。いやでもこれは違う…
一縷の望みをかけ、早めに準備を済ませた後、船着場に集合する前に大冨共同売店に寄った。 ここは西表島大原のコンビニでありスーパーだ。 朝は7時開店の嬉しい仕様で、だいたいなんでもここで揃う。 そして願い通り、トランクスも売っていた。
よかった〜
なんやかんやうまいこといきますな。
前日夜に撮った僕らの共同売店
小雨が降って、それなりに風がある天候。 金盛さん直々に操舵してもらうことに。「こんな天候で行くんか…」 と言われたけど、 まぁ山ん中に入っちゃえばなんとでもなるでしょう。
それよりボートが出せなくなることを危惧していたが、 それは全然大丈夫だった。
屋根つきの船を出してもらう
せっかくのプライベートマングローブツアーだが、 雨と寒さで何も感じない。 とりあえずパシャパシャと何枚か写真だけ撮った。
干潮近くても沢の近くは歩けなさそう
ボートは結構な勢いで進み、30分ほどで船で行ける最奥に到着した。
船から木を渡って上陸。 ひとまず予定通りの場所まで来れて安心する。
たぶんここが恒例の上陸地なのだろう
やっと沢登りを始めることができる。いろいろ調べたりしたし、ようやくといった感慨がある…
少し歩くと、川が広くなった。
ここは西表っぽい沢…なのかな?普通の沢か。 いやでも植生はあまり見ないものだ。
沢だな…という感想
とりあえずまだ4月なったばかりというのに、 水はそこまで冷たくないのが嬉しい。
しばらく進むと、淵が出てきた。
西表のイメージ通り、流れがないので少し汚いw
まぁでもジャングルっぽくていい感じだ。 相方は果敢に泳いでいった。
もう泳ぐのか…ちょっと寒いぞ
滝と呼べるような滝はなさそうだ。たまにナメ、あって段差のようなものがあるくらいで沢始めにちょうどいいくらいの塩梅だ。
淵があってもなるべく泳がないでいたかったが、 進むにつれてそうもいかなくなった。
まさに川といったような淵で、もう泳ぐしかない。
いや、巻こうと思えば巻けると思うが。
ガイドが入っているのか、 ここまでピンクテープが結構ある。 でも巻きの方がめんどうくさそうなので素直に泳いだ。
ピンクテープがかなり奥まであった。ガイドかな?
けっこういいペースで来ていると思ったが、 泳ぎはやっぱり進みが遅い。
手間取るようなところもないけどゆっくりと進んでいった。
泳ぐ。泳ぐ。
一際長い淵を泳いだあと、 仲間山の北のコルに詰め上がる支流に入る。
ここに入ると小滝も現れ、川から沢といった感じになる。(『 南国探検』によると仲間川東沢というらしい)
それでも難しいところはなく、サクサクと進む。
途中珍しい植生を見ては鑑賞する。
すると登れなさそうな大きな滝、7m滝にぶち当たる。
右岸は無理そうなので左岸から巻く。
そんなに悪くなく、すんなり水流に戻れた。
もうそろそろコルかな、といったところで、 サキシマスオウの木がドドンと出てきた。
いちいち植物のスケールがでかいのが面白い。
───俺がサキシマスオウだ
そのまま藪こぎなくすすんで、コルを通過。
源頭みたいなものは殆どなく、 数分枯れた部分を歩いたかな、というくらいで、 まるでずっと沢が続いているように下降に入っていった。
さてここからは幕場近くまでは単調な沢歩きだ。 翌日の天気が午後から崩れる予報のため、 なるべく距離を伸ばしたいところ。
しばらく単調な沢を下り、 もうそろそろ疲れたし泊まりたいなと思うようなあたりで、 15m滝が出てきた。
巻き降りるのは厳しそうなので懸垂下降をする。
右岸の木に残置スリングがたくさん巻いてあったが、 古そうなのでロープは樹に直接まわした。
巻きは探ってないです
この滝を降りると、赤テープが出てきた。
ナーラの滝まではまだあるけど、 ここまで滝とか見に来たりするのかな?
ちょっとこのテープを辿って沢岸を歩くと、 寝るのによさそうな広いところに出た。
おぉ、今日はこの辺でよさそうだ。
ここまで順調で何よりだ。
この辺にしようかと荷物を置き、 もしかしたら先にはもっといい所があるかと思いちょっと進むと、 何やらもぞっと小動物が動いた。
ウリ坊だった。それも3匹。ささっとどこかへ行ってしまったが、 頑張れば捕まえられちゃうぐらいの速さだった。
お〜珍しいもの見れたとか思ったが、「いや近くに親イノシシがいるのか?」 と怖くなり、すぐに引き返した。
テン場にしようとしたところからそれほど離れていないけど、 このテン場は変えたくなかったので、 相方には何も言わないでおいた。
イノシシが近くにいるかもなんて怖いしね。
いつの間にか小雨は止んでいたが、もちろん薪は濡れており、 というか薪と呼べるような木はそもそもなかった。
そういえば西表の沢で焚き火とかしたことないな… いつも雨なイメージだ。
あ、たぶん沢で焚き火とかしちゃいけないと思いますよ!
虫とかいたらキモいのでクロスオーバードームをたて、 着替えて中に入る。うん、快適!
晩御飯の生姜たっぷり沖縄そばを食べたら、 かなり早く眠りについてしまった。
んまい!
ーーー2日目
翌朝、バタバタとテントを叩く雨音で起きる。
なんかめちゃめちゃ降ってる…
おかしい…降るのは午後のはずなのに…
相方が言うには深夜にもドシャブリの雨が降ったらしい。
外を流れるコーヒー色の川を見るに、どうやら本当そうだった。
ここで水を汲んだはずなのに…
ここからの難所はない…はずだったが、状況が変わってきた。
沢が増水してコーヒー色なので、川岸を歩くしかない。 しかし何故か赤テープはあるからこれを辿れば大丈夫そう。
昨日ここまで来といてよかった。
テープを辿っていたら渡渉が出てきた。 普段なら何の問題もなさそうだが、濁って底が見えなく、 ちょっと躊躇する。
腰の上くらいの深さだったが、 幸い流れは強くなかったのですんなり渡渉する。
深さがわからなくて怖かった
渡渉したり、途中なんどかテープを見失ったりしながらも、 ナーラの滝の落ち口に来た。
ここで懸垂下降をするために50mロープを持ってきていたが、 降りても下は濁流が待っており、 どう見ても懸垂は出来なさそうだった。
ここで巻いて降りるかぁと少し思案していると、 なんか水たまりっぽくなっているところにビチャビチャと長い何か が跳ねており、掴むとそれはオオウナギだった。
ビックリしてちょっと持ったあと、 近くの岸にポイッと捨ててしまった。 水から上げたから落ち着いて写真でも撮れるかと思ったが、 そのまま身をくねらせて一瞬で水流の方に戻ってしまった。
惜しいことをした…まぁでも相方も見たから、 ウソじゃないってことだけわかればいいや。
さて、左岸にテープが続いていたので、 またもそれを辿って降りることに。 濡れて土がグズグズで少し悪かったけど、問題はなさそうだった。
巻き降りてマーレの滝に少し近づくと、 写真で見たのとは全然違う姿がそこにはあった。
巻き降りる道があってよかったぁ…
写真で見たのとちがう…
ここまではツアーが出ており、トレッキング道があるはずだ。 これで一安心。
おそらく右岸にトレッキング道があるんじゃないかな〜と思いながらも、渡渉が出来ずとりあえず左岸を降りて行った。 結構進んだあと、適当なところで渡渉すると、 ちゃんと道っぽいのに出た。
やっぱり右岸だったね、なんて言いながらもう終わった感を出すと、数分で道が途切れた…
少し辺りを探すと、支流を挟んだ先に赤テープが見える。
この支流、深そうなんですが… ホントにここトレッキングしてるんすか?
結局腰までの渡渉で何とかなったが、信じられない…
そこからは登山道といったような道で、順調に進むことができる。
しばらくすると、仲良川の「船着場」に到着した。
ジャングルクルーズの始まりだ
着いた〜〜といった感じだが、まだ何も終わっちゃいない。
目の前にあるのは沢などではなく「川」。岸を歩くとかそういうものじゃない。 普通の沢下降でこれが出てきたら絶望するだろう。
しかし僕たちには「パックラフト」がある。
ようやく使うことができる…!
流れもなく、太く、深く、そして長いアマゾン川のような川だ。ワクワクしてくる。
とりあえずヒルをチェック。そんないないだろ… とか思っていたが、ソックスの付け根を4,5匹噛まれていた。
めっちゃおるやん… そういえばなんかトレッキング道のところで痒かったな…
どうやら沢にはいないがトレッキング道にはたくさんいるみたいだ 。
駆除し、パックラフトを出して準備をする。
10分ほどで膨らまし、おまけに浮き輪を膨らませて準備完了。 今回はパックラフトのライトウォーターディンギーと浮き輪を連結させ、交代でパドルを漕ぐという作戦だ。
今回が初使用なのでここで進水式。うむ、楽しい!問題なし。
川の深さも充分で、流れがないので転覆もなさそう。 まさにうってつけの環境だ。
寒いのでとっとと出発する。
雨は相変わらず降り止まない。というか強くなってきた?
コンディションは悪く、さながら密林迷宮からの脱出行だ。
水が汚いぜ!
順調に進むが、パドルに慣れていないので結構疲れる。いや、 探検部のころにパドルを使う機会は多かったからわかっちゃいたけ れど。
少し進んで、飽きてきちゃったので交代してもらう。
浮き輪にお尻をはめて、仲良川遊覧としゃれこんだ。
楽が出来ると思ったが、とても寒い…結構辛い。 動かないから体が温まらないし、お尻は浸かっているので冷たい。
これは漕いでいる方が楽なんじゃないか…と思いながらも我慢した。
見た目は優雅でラブリー
何度か交代しながら、意味もなく写真も撮っていると、 デカい鳥のようなものが飛んでいた。デカいな… と思ってよく見ると、コウモリだった。 「ヤエヤマオオコウモリ」だ。結構怖い。ただ距離があったので、 うまく写真に撮れなかった。残念…でもいいもん見れたな。
結構海の方に近づいてきたかな〜というあたりで、 カヤックに乗ったガイドとツアー客の3人組とすれ違った。 それも二組。
これは驚いた。雨が強めに降っていて、風もある。 よくこんな状況でツアーに行くな…事故はないかもしれないけど、 全然楽しくないだろ…現に僕は寒くて仕方ない。
もしやと思って浮き輪にお尻をはめたたまま、「 マーレの滝に行くんですか!?」とガイドに聞いてしまった。「 そうですよー」と行っていたが、「っ、と、 渡渉があるんで気をつけてくださいね!」などと言ってしまった。 ガイドは熟知してるだろうに…
ただホントに行くの?と思ってしまったのだ。 ウェットとか着てたらいいかもしれないけど、 ツアーで茶色い川の腰までの渡渉って嫌じゃないですか? 逆にお金貰いたいっすよ…どうしたのかホントに知りたい。
ちなみにもう一組のガイドに「 それで直接白川港に行くのは厳しいですよ」と言われた。「 いやーそうなったらヤブとか漕いで行きますよ〜では〜」 と言ってすれ違った。いや、チョクで白川港の前の海には漕いで行かねぇよ… 後ろ浮き輪やぞ…
景色もよくないのによく来るな〜
沢にも浅いところが出てきたな、というところで、 海と川の境目になる部分?を通過した。
右岸にはマングローブが露出し、歩けそうな干潟が続く。
風も強くおそらく歩いた方が早いので、予定通り 上陸して干潟歩きとする。
ギリギリ歩けるようになる
ただ、まだ水が引いたばかりだからか、 この干潟に足を取られて進みにくい場所がある。
もしかしたらパックラフトをもう一度漕ぐ必要があるかもしれない 、と考えて畳まないで移動した。
そのせいでパックラフトが風をモロに受け、 歩きにくいことこの上なかった…
深いところは抜けない
風が強いのでマングローブの間に入って休憩しながらも、 順調に歩を進める。風が強くて寒く、結構必死だからそりゃ順調だ。
もう遠くに白川港が見えるあたりで、本流が右岸の方に流れて歩きができなくなった。頑張ればへつって進むこともできるのかもしれないが、ここは素直にもう一度パックラフトを漕ぐ。せっかく畳まないでおいたしね。
面白い岩壁を眺めながら進む。ディズニーみたいだぁみたいな語彙力しかもたなかった。
わぁ〜ディズニーみたい〜
少し進んで、干潟に再上陸。もう干潟が港まで続いているのが見えて一安心だ。
干潟の奥に、何か4足動物が動いているのが見えた。少し近づくと、それは森の方に逃げ始めた。「リュウキュウイノシシ」だ!
干潮時を狙って、潮干狩りのようにカニとかを狙っているらしい。距離があるからか、とっとこ進む様はかわいかった。
とっとこ逃げるよノシ太郎
ここにきて二級河川仲間川起点の石柱を発見する。ここが起点っていうのがよくわからなかったけど、そうなんでしょう。
近くの支流が流れているところで装備を洗い、ようやくパックラフトも畳んだ。
起点もわからんけど左岸ってのもなんだ…?
───虚無
記念写真を撮ったりしながら干潟を進み、ようやく港に辿り着いた。
今回も無事に帰ってこれてよかった。
到着!これは「うれシーサー」のポーズ。魔を祓うと言われる。
今日はほとんど「漕ぎ」がメインだったのヘトヘトってわけではないけれど、雨風があって寒すぎる。
昼のバスの時間に間に合わなかったため、ここで2時間近くバス待ちとなる。
乾いた服に着替え、雨の降り止まぬ白浜港ターミナルでゆっくりとバスを待った。
ようやく時間となり、ほとんど人の乗らぬバスに乗って港に向かい、すぐに石垣島行きの船に乗り、着いたらタクシーに乗ってホテルにinして人権を得た。
お疲れ様バス待ち
ーーーーーーー
やっぱり今回の西表も雨だった。
西表の沢といえば雨のイメージだ。いつか晴れた日にも行ってみたいな。
にしても、今回のパックラフト下降は面白かった。
今回のような合理的にパックラフト(もしくはそれに替わる何か)を使うしかない、というような沢のルートは日本にあまりないんじゃないだろうか。それも海に流れていくなんていうものは。
それなりに記録のあるルートだけれど、あの仲良川の船着場に着いたときのワクワクは、久しぶりの感情だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
山行から3日後、小浜島のホテル「はいむるぶし」に泊まった。
なんか部屋が勝手にアップグレードされ、海と西表島が見える部屋に。
普通に泊まったら一人一泊でクロスオーバードームが買えるくらいの値段だ…
ひろ〜〜〜い!!
────chill
いや、やっぱり僕にはこっちの方があってますわ(笑)
スイート泊まれてうれシ〜サ〜〜〜
西表島 仲間川〜仲良川(出発まで)
西表の沢に行ってきた。
旅行をする機会を得たが、まだまだ海外には行けそうにない。
ということでギリギリ行ける遠いところ、で沖縄だ。
沖縄の沢と言ったら西表。2泊するほどのやる気はないなぁ、 ということで1泊に。
ユチン川~イタジキ川遡下降は10年位前に行ったので、 違うところに行きたかった。
10年前の山行のマヤグスクの滝のちょっと奥
単純に「西表 沢登り」で検索すると、「ギンゴガーラ川~仲良川」 の記録が1番上に出てきた。
これは面白そう!ギンゴガーラはまぁ西表の沢だな、 という感じだが、仲良川はアマゾンのジャングルに流れるような「 川」だ。
しかもそのまま海に流れていくとはロマンがある。
スタートはどこにしても、ここを下降しようと決めた。
さて、西表の沢に行くところで問題になるのは、西表島の「キャンプ場以外でのキャンプ禁止」というルールだ。
今回の沢で使う予定なのはクロスオーバードームだ。クロスオーバードームは「 ドーム型ツェルト」だ。
ツェルトで泊まるのが「キャンプ」か? キャンプじゃないでしょう?そうでしょうそうでしょう。
まぁ「野宿」も禁止されているけれど…ビバークは… 野宿じゃないし…ちがうし…
記録ではギンゴガーラに入るために遊覧船に乗り、浦内川の奥の方まで行っていた。
遊覧船の浦内川観光に聞くと「森林管理署?に許可を貰ったらいいですよ〜」と言われた。
許可って何だ…入山届は出してますけど?ってことで行けそうか?どうなんだ?たぶんいけると思うけど…
遊覧船にもしも乗れない、ってことになるのが怖いので、 テドウ山越えのルート案もあった。
だけどちょっとめんどいし、 ヒルも多そうといのを聞いてあまり乗り気でもなかった。
遊覧船はもしもが怖い、テドウはヒルが嫌だしめんどい。 ということでギンゴガーラはなくなり、
東から仲良川に繫げる仲間川遡行に、それに値段は高くつくがボートチャーターアプローチにしようと決めた。(船代1万+一人4千円)
こちらもボートを漕いでいる記録、 歩いてアプローチする記録があるが、 ボートを漕ぐのにもかなりの時間がかかり、 また歩きのアプローチだと「仲間川」 の本流に入っていくにはかなりの藪を漕がなくてはならなさそうで、 自然に山越えに向かうと仲間川を辿る部分が少なくなんだか心地よ くない。
ということでのチャーターアプローチ。まぁ、 たまにはこんなお金を使ってもいいでしょう。
仲間川観光に聞くと、森林管理署に言っといてもらえたら、 みたいなことを言われた。
まぁ入山届はFAXで出したからオッケーだろう。
オッケーだった。
しかし仲間川アプローチにしてよかった。何が良いって、 辿るラインがまっすぐでキレイ!
まっすぐ山越えに向かって西表を横断して気持ちがいい。
今回の行程
その気になったら早朝に石垣島から西表島に渡船し、 そのまま仲間川アプローチにすることもできたが、 一応少しでも早く、と前夜に西表島入りをした。
前夜は安い宿、ということで「しまおとや」に泊まる。
この宿はすごい良かった。
ちょっと高いところにあって山が見えていいし、 談話室みたいなところにたくさんの漫画、 それに三線が置いてあった。
夕暮れに聴く三線の音は風情豊かで、 これだけで西表島に来て良かったと思えるほどだった…(まぁ僕は全然弾けないが)
宿は宿事業の他のことでも忙しいみたいで、 このときはたまたま宿をやってる期間でタイミングがよかった。
夕暮れ前に三線を奏でる
三線が一段落したらお腹が空いてきた。夕飯はせっかくなので、 ボートチャーターを依頼しているマリンレジャー金森のところにある、ビアテラス仲間川で食べることにした。
本日の刺身、ということでミーバイの刺身をいただく。
肉厚で美味しい…!
明日から遡る大きな仲間川を見ながら食べるご飯は格別だ。 珍しくお酒も飲んでしまった。
ミーバイはハタ類とのこと
お腹もふくれ、すっかり日が暮れたなかで宿に戻る。
明日からの天気は、あまり良くはないらしい…
まぁなんとかボートが出ることを祈って、早々と眠りについた。
帰り道はくらいくらい
NZ アスパイアリングで沢登り (ワイパラ川とビナクル(沢)と氷河とアスパイアリング 6~10日目)
6日目(2018年3月10日)
前日の話し合いの結果、空身で氷河湖まで往復し、ビナクルを遡行しようという話になった。とりあえず皆、氷河湖は見てみたかったのだ。
空荷で氷河湖に向かう。荷物はないのに積もった疲労か、体は重い。そんなにかかるとは思っていないけれど、何も面倒なことはないといいけれど…
と期待通り、特に難しいところはなく、無事に氷河湖に到着した。
ワイパラ川をツメた先の氷河湖。緑の尾根の向こう、壁の脇にガレガレの沢、ビッグネルがある
氷河湖は思ったよりも小さかったが、周りには絶壁、何段にもなる長い滝、そこに覆いかぶさるような氷河と、迫力あるものだった。
べったりと氷河が張り付く
確かにビッグネルを遡行するのは難しそう、ということも確認して、すぐにもどった。
先を急がないといけない。
ワイパラ川方面の氷河湖
今日は7時半に行動開始したが、ビナクル遡上開始は11時になった。ちょっと今日中にコリントッドハットに着くのか…?と不安になる。皆の口数も心なしか少ない。
しかしビナクルは最初の200mは時間がかかったものの、そこからは滝も適度に登れて標高をあげてくれる、気持ちのいい沢だった。この荷物での普通の沢登りはかなり疲れるものだったけど…
ようやくよくある沢登りといった感じだ
1000m の二俣を過ぎたさきで、水量は多くないが緩やかに流れる滝が出てきた。遠めから見た感じだと、左岸のルンゼは藪に覆われかなり上まで続いている。しかし右岸の壁は緩やかでかなり上までノーロープで登れそう。迷ったが、 とりあえず一段右岸を登ってもまだ左岸に移れそう、ということで右岸を一段登る。上を見上げると、おや、行けそうだ。流れでそのまま右岸を登り続けた。結構上に上がった先でも水流を横切ることができ る、きもちのいい所だ。
1000m二俣を過ぎた所の滝
重い荷物がこたえる
ここでまた二俣になり、どちらに行くか選択を迫られる。右はとりあえずコルまでは快適に登れそう。左も見えるところまでは登れそうだが、その先がわからない。地形図を見てもどっちもどうなっているかは予想できなかった。結局、コルまで上がった方が安全そうだろう、ということでそちらを上がった。
コルに上がると氷河湖から見えた氷河があった
コルに乗って見上げると、そこには緩やかながら傾斜がある、草が付いたスラブ状の岩壁が広がっていた。とりあえずなんとなるだろう、 ロープもあるし、と信じて進む。
傾斜は緩やかには見える
意外と登りやすく、そのまま二俣の左を登ったら来たであろう本流にぶつかった。このころには岩と水だけしかないような景観で、しかし傾斜は適度に緩く、 非常に美しかった。どうやらこの沢は登れる沢で、なおかつ当たりの沢だったようだ。景色を楽しみながら、そしてもう難所は何もないことを期待しながら進むと、1600mの緩い地帯に出た。
意外と登れる
上まで続く水流が見えた!
振り返るといい景色
よかった…終わった…あとは氷河を歩くだけ…と安心した。しかし氷河は想像していたのっぺりと広がるものではなく、ギザギザズタズタに広がるものだった。これは確実にアイゼンを履く必要がある。急いで冬靴に履き替える。 同じ活動で沢靴から冬靴に変えたのはこれが人生初だ。
氷河は分厚そう
沢靴からアイゼンがつく冬靴に履き替える
氷河は当たり前だが「氷」である。雪とは少々感じが違って戸惑った。しかもここはナイフリッジのあみだくじのような氷河だ。もし足を滑らせたらクレバスにまっ逆さま。
あみだくじナイフリッジ
少し進んで、振り返るとまだO部さんがアイゼンをなんやらしている。軽量化のため、オモチャみたいな4本か6本爪アイゼンだったうえに、うまくつかないようだ。
まぁO部さんはなんにでも対処出来ると思うので自分のことに集中する。
保坂が先導してくれてなんとか越えられた。かなり慎重になってしまった。
もしこのクレバスが、何かの気まぐれで2mぐらい切れていたらどうなったのだろう。 誰かが決死の大ジャンプをしたのだろうか。 その後はスクリューもないのでビレイも出来ず、 皆がジャンプするのだろうか。しなくてすんで本当によかった。
あみだを外してはいけない…
今度こそあとはもう小屋に行くだけ…と思ったが、今度は小屋までのルートがわからない。小屋は見えたが、岩壁と、繋がっているかわからない氷河に囲まれ取りつけない。
日も暮れてきそうでとても焦る。時刻はもう19時だ。
少し岩壁を回り込んでいると、ここはたぶん繋がっているだろうという氷河を見つけた。
僕のアイゼンでもいけるのこれ?という感じなので、当然O部さんのアイゼンでは無理そう。
するとO部さんは「俺は岩壁のほう登るわ」、と言った。確かにそのアイゼンならそれしかなさそう。ただ岩も上まで繋がっているのかはよく見えない。
僕はそっちの岩は怖かったので、小屋で合流しましょう、ということになった。
まぁO部さんならなんとでもなるでしょう。それより自分の心配だ。
ホサカも氷河ルートを登ることにしたようなので、2人で登る。が、繰り返すがスクリューはないのでロープは出せない。
ホサカが登り、ただそれについていった。
ちょっと傾斜が強くないですか?雪渓じゃなく氷ですよ?
後半になるにつれて、ちょっと傾斜が厳しくなってきた。この荷物、さらには平ヅメアイゼン、 手には沢バイル一本。何故ロープが垂れていないのか不思議な状況だ 。ここは雪の斜面ではなく、氷河。滑ったら50mくらいの氷の滑り台だ。
重い荷物が背中を引く。刺さらないバイル、刺さらないアイゼンで命からがら抜けて、やっと小屋にたどり着いた。 この山で一番怖かったかもしれない。
画像下にちょっと見える穴がアイゼンの跡
小屋にはガイドパーティがいたが、自分らは3人で4つのベッドも使うことができ、 快適に過ごせた。夜も暖かく、逆に暑くて靴下とズボンを脱いでシュラフを半身に被るぐらいのほどだった。
19:45小屋到着。まだ日は暮れなかった。
ーーーーーー
「天気が悪くて停滞にならないかな…」
「僕も停滞したいですね…」
そんな会話をしていても、明日の天気予報は好天を告げ、どうやら行動の他なさそうだ。
噂によると山頂までは往復8時間、ならば遅くに起きても大丈夫だろう、とも思うが、一応は海外の雪稜だ。何が起きるかわからない。
起床は5時にしよう、いや5時半にしようなどと会話をしていたら、他のパーティが3時起き4時出発すると言っている。なので僕たちも少しは早く、5時起きにしようとあいなった。
7日目(2018年3月11日)
流石のニュージーでも6時過ぎではまだ暗い。ヘッデンを着けて行動開始。
自分とホサカのヘッデンの明かりは暗く、目印となるケルンを探せるかはO部さん次第だ。「ケルン探す気ないなその明かり…」と言われる。
いや……すみません。
しかし踏み跡はそれほど複雑ではなく、すんなりと進ませてくれる。
夜も明けてきた。久しぶりに稜線から見る朝焼けは美しい。南島でも高い方であろう峰々が見渡せ、気分もあがってきた。
順調に歩を進めていると懸垂地点が出てくる。これはクライムダウンは怖そうだ。素直に懸垂する。
その後は稜線上を歩いたり、巻いたりしながら進む。基本的にはケルンや支点があるのでわかりやすい。問題なく進むと頂上直下まで来る。ここまでくると流石に寒い。岩陰に隠れて風を凌いで休憩する。
岩稜にはほとんど雪は乗っていない
地面も所々凍っているが、しかし後は単調な坂を登るだけのようだ。
山頂付近は雪に覆われていた。しかし雪はこの山頂周辺数mしかなく、それにステップが刻まれている。どうやら本当にアイゼンは必要なかったようだ。
無事、登頂。写真を数枚撮って、そそくさと引き返す。ここは寒すぎる。
長い沢のツメだった
下山は楽だが、行きより道がわかりにくく感じる。何度か間違えてしまったが、とりあえずはまた懸垂したポイントに戻ってこれた。ここで念のためロープを出すが、僕の靴はなんと下山開始してすぐに靴底が取れてしまった。
古い靴を持ってくるんじゃなかったなぁ…
なのでリードじゃんけんには加わらず。やったぜ。
O部さんに行ってもらったが、ロープが無くてもまあ問題はないかなというくらいだった。
あとは下るだけ…今日は行動をいつもより早く終えて長い休憩が取れそうだ。といっても9時間は行動したんだけど。
途中で懸垂下降した
その後は無事にハットに戻る。
やはりハットは快適だ…もう登らなくいいというのが本当に嬉しいな…
ハットからもアスパイアリングがよう見える
ハットではワイパラ川から来たんだよ~なんて話をして、 早々に眠りについた。
8日目(2018年3月12日)
今日下るガイドパーティ二人組と同じ6時半に起床。 ゆっくり準備していると、話しかけてきて色んな食料をくれた。 どうやらガイド会社がたくさんデポしていくらしく、 それらはガイド用のロッカーにしまうが、 誰が食べても同じだからと言って僕たちにも分けてくれた。
おかげで今日の朝食は3人で鶏肉400g入りチキンスープ、チーズ& バタートッピングラザニアパスタ250g、フルグラ&ヨーグルト&桃の缶詰、チョリソ300g、チョコレート、 トレイルミックス、ゼリーとかなり豪勢なものとなった。おかげで大量の食料を消費するため、起きてから出発まで3時間半かかった。
食べる。ひたすら食べる
下りはまず尾根を岩づたいに降りるが、 これはすぐに道が見つかった。小屋に向かうときだとわかりにくいだろう。
さて、足元は登山靴の靴底は相変わらず完全に剥がれたままだ。アイゼン付ければ取れなくなるかなとも思ったけど、急に外れたりしたら怖いので止めておいた。
古い靴を持ってくるんじゃなかったなぁ
沢靴で下山をすることにする。
氷河が平らだと思ってたところが思ったよりもグサグサだったため 、沢靴の自分はぴょんとギャップを飛ぶことが出来ず苦しんだ。 大きなギャップとかが出てこなかったのでそれはよかった。
モ○ベルの沢靴は氷河で滑る。改善が待たれる。
ガスが晴れた瞬間を狙って進行方向を定める
ビーヴァンコルからはガスのせいでケルンがよく見えないことが何度かあったが、ウロウロすることなくすんなり通過。 ここは足元が沢靴だから歩きやすいというのもあったかも。
一回だけ懸垂下降をする。
もうちょっとケルン多くてもいいよなぁとか話した。結構間隔遠いんよね。
池塘ってか池もある
一気に標高を下げ、平坦になるところまで降りたあたりで雨が降ってきたが、 もうここから危険な所はないので安心だ。
奥の沢を降りてきて、トラック(登山道)に合流する
登山道に合流してすぐのところに岩小屋があった。
地形図ではもうちょっと下に岩小屋のマークがあるので探しに行くが、ない。 たぶん地図が間違っているのだろう。これが岩小屋のスコッツロックビビイのはずだと信じ、仕方なくここで幕とする。 岩小屋は意外と快適で、普通に寝られそうだ。 サンドフライがいないのもありがたい。
そんなに不快じゃなかった
明日はもう、平坦な道を歩いて、その後ボートで
下るだけ…
明日の川下りがうまくいくことを祈って、寝た。
9日目(2018年3月13日)
ゆっくり起床。
雨も止んでおり、空は晴れている。
いいラフティング日和になりそうだ。
何度か森に入ったりしながら登山道を進むと、やがて開けた平坦な道になる。
森を抜けていく
あとは平坦な道かな?
なんて平和。うーんニュージーランド。
しばしば休憩して、牧歌的な風景を楽しむ。
おひるねタイム
どんどん降りていくと、次第に沢が合流し、マツキツキ川は太くなってきた。
あれ?もうこれボートいけるんじゃないの?いきます?という雰囲気に。
やっとボートの出番だ。
ここまで9日間、この一個3.4kgのボート2艇、空気入れ、シングルパドル3本、ライフジャケット3つを運んできた。
やっと、やっと使えるんだ…
ボートが膨らむ。期待も膨らむ。
ちょっと水位が低い気もするが、流されたりしないので安心だ。
もう難所といえるものはない。あとは楽しむだけだ。
しゅっこ〜〜
二人と一人に分かれて乗り込む。
ちょっと二人の方が重そうに見えるが、無事に流れ出した。
遅くはあるが、確実に進んでいる。
とても気持ちがいい…!
ぼくたちはどこへでもいけるぞ…!
今にも沈みそうだが頑張っている
〜20分後
ボートの底に穴が空いた。
どうやら川が浅すぎたようだ。
何度かボコボコと岩に当たったら、すぐに破けた。
ダクトテープでの補修もむなしく、ボートでの下降は不可能になった。
本当にこれで川下りは終わりなのか…?
こんなの…こんなの僕たちバカみたいじゃないですか…!
なんでこんなにかさばって重いものを…
これで僕たちの20分に及ぶ川旅は、終わった。
登山道に戻り、とぼとぼと歩き始める。
あと数時間も歩けば、林道の終点であるRaspberry Flat Carparkに着く。ここは1回来たことがあって、普通に観光地みたいになっている。
そこからは未舗装林道30km+車道20kmでワナカ湖だ。
歩けんのか…?いや無理だろうなぁ…
途中でグルーミーゴルジュがある谷?の脇を通る。そういえばア○ラさんたちは今ここに入ってるのかな、なんて話ながら通り過ぎる。
記録で見たあのゴルジュと比べて、ここはとても平和だ。とてもあんなものがあるとは想像できない。
確かこの辺の谷?(連絡取ったらやっぱり入っていたみたい。後日泊まってたロッジに遊びに行った)
疲れた体をひきずり、ようやくラズベリーハットカーパークに到着した。
ここからどうするか。
歩いて帰るか、それともヒッチハイクして帰るか。
ここまで頑張って歩いてきたんだ…そんな他人に頼って終わらせていいのか…!?
とりあえずは明日考えることにして、今日はここの東屋で寝ることにする。
ラズベリーフラットカーパーク。いつも結構人が多い
10日目(2018年3月14日)
帰ろうとするカップルに声かけて自分だけ車に乗せてもらった。
足痛いわ。歩くなんて無理w
ワナカの街で下ろしてもらって、車を回収してまたラズベリーフラットに戻ってきた。
二人を拾って、ワナカに戻る。
お疲れ様でした。
すごく楽しい山でした。
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一人1冊ぐらい本を持ってきたのだが、貸してもらった「流れる星は生きている」(藤原てい著)がとても心に残っている。
満洲から命がけで帰ってきたこの人たちに比べたら、僕たちのやっていることなんてお遊びでしかない。
母は強し、だ。
とても敵わない。