山彦よ響け

山とVしかやることがない人の日記

宮之浦川〜七五岳東稜(出発まで)


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転職をすることになった

ということは有給消化が出来るということ。
普通に働いていたら手に入らない、長期休みを得ることができた。

いまは3月中旬、旅の始まりは、4月の下旬になりそうだ。

せっかくだからながーく遊びに行きたい…と、いつものように無職のホサカに声をかけた。

4月下旬は空いてる?と聞くと、「4月はまだ何もない」と返ってきた。

いや、強すぎる。
何もないって、ホントに何の予定もないの?
いろんな未来を生贄に捧げ、僕がこの休みを錬成するのがどれだけ大変だと…それを当たり前のように…

まぁパートナーは見つかった。
予定を合わせるのも余裕そう。
ホントは海外に行きたかったけど、この情勢だと無理そうだ。

暇だったらどっか行こうと誘ったら、
屋久島に行きたいと言ってきた。
確かにこの時期に泊まりで沢に行けるのは屋久島とか沖縄とか、とにかく南だな。
二つ返事でオーケーする。
まぁ遠くだったらどこでもいいし。

沢も登りたいし、クライミングもしたい。どちらの欲も叶えられそうな、屋久島はいいチョイスだ。



せっかくだから有名なところは行きたいので、宮之浦川屋久島フリーウェイは行きたいね〜という話になった。
フリーウェイに行くなら、スラブの練習しないとなぁということで、とりあえず二人で小川山で練習する予定を立てた。


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数日後、ホサカから中指をパキったと連絡が入った。
マジかよ~
大丈夫すか?

それに聞けば少し前に足の小指を凍傷一歩手前のしもやけになったようで、靴を履くと常に痛いらしい。

大丈夫すか?

まぁ、ホサカくんは強いし、いいハンデかな…

小川山の練習当日は、特にまぁ楽しく終わった。スラブの10cを2本と11aが1本登れた。長めの10cをオンサイトしたときは自分は天才かと思った。
スラブはむずいからね!
マラ岩の10cのスラブは、何度やっても登れてないんでw
今回も登れない10aがあったけど…まぁ、問題はないはず……不安だなあ

11aのノイズ
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沢の準備は何もしていないけど、そもそも予定もまだまともに決まっていない。
とりあえず1週間ぐらい山に入って、それの前後どっちかにフリーウェイやりたいね、とは決まった。
だけど退職前の勤務は引継ぎ等で忙しく、全然予定を考える気にならない。
そもそも屋久島は狭すぎて、遡下降で1本のラインをひこうとするとすぐに登山道に出たり、町に降りてしまったりする。うまい具合に気持ちのいいラインをひけないのだ。
とりあえず時間をたくさん使うために、沢にクライミングも混ぜたいね、という話はしてた。

そんな感じで日々は過ぎ、出発2日前、ホサカから「宮之浦川登った後、七五岳東稜登って黒味川を下降しない?」とラインが来た。

七五岳東稜?よくわからないけど、めんどくさいから屋久島に向かう途中で考えるか。
「見てみる」「(クライミングシューズは)1足欲しいね」と送って、早々にラインを切り上げて寝た。
……もっとよく考えるべきだったなぁ

[0日目]4月18日
ついに屋久島への出発日、羽田から鹿児島に飛行機で飛び、そこから高速船で屋久島だ。
やらなきゃいけないことは、鹿児島での僕の行動食、食当分の飯、それにガス缶の購入だ。時間はたっぷりとってある。

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まずはガス缶の購入、とあたりをつけていた鹿児島駅周辺の店には、どこにも置いていなかった…しかたないので暇なホサカに天文館モンベルまで歩いてもらう。というか気づいたらもうそっちに行ってた。
僕は駅前のスーパーでお買い物。
けっこう山に行ってるつもりだけど、自分が1日どれだけ食うのか、いまだにわからねえんだよなあ。1人4日分の食当と、8日分の行動食を買わなきゃいけないのだが、どうするか。

とりあえず食当分としてインスタントラーメンとパスタを買って、あとはおいしそうなお菓子をたくさん買った。
なんか行動食、量が凄い多い気がするけれど…お腹すいたら、さびしいしね。

夕方、鹿児島から船に乗り、屋久島に着いたのはもう夜だった。
宮之浦港周辺で寝ようとしたが、ここはちょっと、暗すぎる。夜の海はなんか怖い。
「ちょっと散歩がてら周り見てくる」とホサカを残し、いい寝る場所がないかあたりを見てくることにした。まばらな街灯を追い、蛾のようにフラフラと明かりがある方を目指していくと、スーパーがあった。
そう、「南のエデン」こと、ヤクデンだ。時刻は20時過ぎ。まさかこんな所に営業しているスーパーがあるとは…うれしい驚きだった。これで温かい晩飯を食べることが出来る。
ホサカに連絡するのもさておき、ウキウキで入店。チューハイに九州限定のポテチ、それに惣菜にカップ麺を持ってレジに向かっているとき、自動ドアが開いてホサカが入ってきた。
お前もヤクデンに吸い寄せられたか…
「なんかスーパーあったわ」と今さらなことを言い、二人とも晩飯を買ってヤクデンを後にする。
そういえばヤクデンに来る途中に東屋があったので、今日はそこで飯を食って寝ることにした。

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やっぱり温かい飯はいいなぁと落ち着いていると、思い出した。明日の朝から行動開始だけど、いまだにまともな計画を立てていない。計画書書いてコンパス出さなきゃいけないんだった。

移動するときに書くはずだったが、なんか寝て気づいたら屋久島だった。
急いで記録を見て、宮之浦川~七五岳東稜~黒味川下降の日にちを計算すると、
6泊7日、予備日を1日設けての7,8日間の山行になるようだった。おお、ちゃんと8日ぐらいになってていい感じだ。まぁすべて順調にいったらだけど。
というか沢はいいんだけど、この七五岳東稜、こいつがヤバくないですか。一番詳しそうな黒稜会のネットの解説を見ると、7ピッチ280mのスラブ壁で、難しくても5.8。だけどボルト数が10本しかない。280mで10本ですか!?スラブなんですよね!?それにかなり古い記録だけどボルトいきてんのかな…

(黒稜会の記録)
http://kokuryoukai.sakura.ne.jp/2-5-8-2.html


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結局資料は登山大系、屋久島の山岳、黒稜会のページ、それに飯山健治さんがフリーソロしたことを書いたブログしかなかった。とにかく黒稜会と飯山さんのページをスクショしまくり、なんとかなることを祈って眠りについた。